池谷裕二の闘論席
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近所に乗り捨てられたポンコツ車をのぞくと7匹の子猫がニャーニャーと甘えた声を出している。生まれて数日といったところか。母猫は留守のようだ。その可憐(かれん)さを家族の皆にも見せたくて、とびっきり美貌な子を連れて帰った。
親の反応は予想外だった。「野良猫は人間の臭いが嫌いなの。すぐに返しておいで」。
しょんぼりと戻る途中、子猫をくわえてせっせと引っ越ししている母猫の姿が遠くに見えた。巣が荒らされたことを察したのだろう。私は大切に抱いた一匹を、母猫に気付かれないよう、こっそりと戻した。
ところが翌日、車をのぞくと、あの子が母猫に放置されているではないか。その翌日も、またその翌日も。
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