週刊エコノミスト Online書評

過酷な環境でも生き抜くシャボテンに人生重ねる=高部知子

    「浪漫」という言葉がある。ロマンじゃなくて「浪漫」。この二つの言葉にどういう差異があるのかと専門的に問われたら全くわからないのだが、私のイメージのなかでは違う。明治期に傷ついた心を抱えながら生きた一人の漢(おとこ)が、シャボテンを通して、駱駝(らくだ)の背に揺られ砂漠を生きる民の人生を送る……。こんな行間から感じるのが浪漫。何となく伝わるだろうか。『龍膽寺雄(りゅうたんじゆう) 焼夷弾(しょういだん)を浴びたシャボテン』(龍膽寺雄著、平凡社、1400円)を読んだ。

     著者は島崎藤村や谷崎潤一郎などに絶賛された流行作家だが、書くことが苦しく「生きている」と感じられなくなった時にシャボテンと出会う。作家には「ペンの地獄」という世界があるのだそうだが、龍膽寺によると、夏は50度を超える灼熱(しゃくねつ)の煉獄(れんごく)、冬は氷点下十数度という極寒の乾いた砂漠で生きると決めた孤独な植物シャボテンの生き様に、自身の人生が重なるのだとか。

    残り955文字(全文1374文字)

    週刊エコノミスト

    週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
    有料会員になると、続きをお読みいただけます。

    ・会員限定の有料記事が読み放題
    ・1989年からの誌面掲載記事検索
    ・デジタル紙面で過去8号分のバックナンバーが読める

    通常価格 月額2,040円(税込)

    週刊エコノミスト最新号のご案内

    週刊エコノミスト最新号

    6月16日号

    コロナデフレの恐怖14 サービス業に「デフレの波」 失業増で負のスパイラルも ■桑子 かつ代/市川 明代17 市場に問われる開示姿勢 ■井出 真吾18 図解デフレ大国ニッポン ■編集部19 デフレ圧力は過去にない水準に ■永浜 利広20 コロナで「上がった下がった」ランキング ■編集部21 インタビ [目次を見る]

    デジタル紙面ビューアーで読む

    おすすめ情報

    最新の注目記事

    ザ・マーケット