週刊エコノミスト Online書評

過酷な環境でも生き抜くシャボテンに人生重ねる=高部知子

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    「浪漫」という言葉がある。ロマンじゃなくて「浪漫」。この二つの言葉にどういう差異があるのかと専門的に問われたら全くわからないのだが、私のイメージのなかでは違う。明治期に傷ついた心を抱えながら生きた一人の漢(おとこ)が、シャボテンを通して、駱駝(らくだ)の背に揺られ砂漠を生きる民の人生を送る……。こんな行間から感じるのが浪漫。何となく伝わるだろうか。『龍膽寺雄(りゅうたんじゆう) 焼夷弾(しょういだん)を浴びたシャボテン』(龍膽寺雄著、平凡社、1400円)を読んだ。

     著者は島崎藤村や谷崎潤一郎などに絶賛された流行作家だが、書くことが苦しく「生きている」と感じられなくなった時にシャボテンと出会う。作家には「ペンの地獄」という世界があるのだそうだが、龍膽寺によると、夏は50度を超える灼熱(しゃくねつ)の煉獄(れんごく)、冬は氷点下十数度という極寒の乾いた砂漠で生きると決めた孤独な植物シャボテンの生き様に、自身の人生が重なるのだとか。

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