壮大な騎馬民族の視点で相対化した中国史の良書=加藤徹
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古松崇志著『草原の制覇』(岩波新書、840円)は「シリーズ 中国の歴史」全5巻の第3巻だ。本シリーズの特徴は、中国を「草原・中原・江南・海域」に4分し、それぞれを有機的に結びつけて語る点にある。古松ら5人の著者がそれぞれ1巻を担当し、今年3月に刊行された第3巻が最新刊となる。
中国史を人体にたとえると、頭は古代・中原の第1巻。肩から腰までの右半身は、江南・海域を中心に南宋までを扱う第2巻。第3巻は、左肩から腰まで。草原を原郷とする騎馬遊牧民が、千年の歳月をかけて中原まで浸透し、モンゴルに至り「中国」を完成するまでを説く。
本巻の主人公は騎馬遊牧民だ。彼らの原郷は「中央ユーラシア」である。東はマンチュリア(地名としての「満州」)から西は東ヨーロッパまでの、広大な草原地帯だ。歴代の中国王朝の領域が、大陸の片隅の小国に見えてくる。
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週刊エコノミスト
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