戦乱期に教団存続果たす宗教者の一代記=今谷明
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戦国時代の本願寺は、日本で最後の寺社勢力の雄として、全く特異な存在であった。トップは法主(ほっす)と称して鎌倉期の親鸞以来、血脈相承と呼ばれ、世俗的勢力である守護大名等と何ら変わらない。教団全体が武力組織をなし、かの織田信長ですら手を焼いた恐るべき存在であった。もっとも中世では南都北嶺と称し、延暦(えんりゃく)寺や興福寺も武力集団としての面はあったが、戦国争乱の過程で漸次淘汰(とうた)され、本願寺だけが“一向一揆”の名で大名以上の世俗権力として生き残ってきたのである。
神田千里著『顕如』(ミネルヴァ書房、3500円)は、本願寺中興の英主蓮如の玄孫(やしゃご)にあたり、信長や豊臣秀吉と対決・講和をくり返した法主顕如の一代記。しかし彼が背負う大勢力の割には顕如伝は一般に等閑に付されてきた。その意味で、天下人が話題となる最近の風潮の中で、顕如伝が刊行された意義は大きい。
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