週刊エコノミスト Online狂った米国、中国の暴走

米中対立でも伸びる!強靱企業 キーエンス、ダイフク、レーザーテック=和島英樹

    FA関連の製造装置メーカーの株価が好調だ Bloomberg
    FA関連の製造装置メーカーの株価が好調だ Bloomberg

     米中対立は経済の停滞を招きかねず、日本企業の業績にも懸念が広がっている。しかし、独自の技術に強みがある企業などはこうした状況でも需要を取り込み成長できる可能性がある。特に「ファクトリー・オートメーション」(FA=工場の自動化)や半導体の微細化や関連する製造装置メーカーに多く見られ、株価も堅調だ。高技術、高シェア商品を有する銘柄やセクターをチェックしたい。

     FAに不可欠な先端のセンサーで実質的に世界首位とみられるキーエンスは今年5月に上場来の高値を更新した。時価総額でソフトバンクグループやNTTを抜き、トヨタに次ぐ2位に躍り出る場面もあった。生産性向上のためのFAは国や地域を問わず注力している分野で、将来性が評価されている。

     キーエンスの人工知能(AI)搭載画像判別センサーは、明るさや焦点、検出の設定などを全て自動で計測・数値化する。例えば、食品の包装やラベルをチェックする際に自然にできるシワや外部からの光の反射などもAIで補正し「不良品ではない」と瞬時に判別することができる。しかも、センサーは長さ4.4センチ、幅2.4センチ、高さ3.1センチと超小型で、取り付けも容易だ。このほか、立体物の情報を周囲から計測・数値化する3Dスキャナー型三次元測定機など、技術力で他の追随を許さない。

     製造ラインの自動化や自動で搬入・搬出、検品を行う自動倉庫システムなど自動化に必要な技術として需要がある「マテリアルハンドリング」(マテハン=荷役業務効率化)向け機器ではダイフクが世界首位。同社は元々、自動車メーカーから製造工程の省力化の依頼を受け、以降プレス、溶接、塗装、組み立て部品の保管・供給、エンジンテストに至るまでの各工程の自動化、省人化システムを供給してきた。5月には2018年1月の上場来高値8010円を上回るなど、新型コロナウイルス拡大の影響を感じさせない強さで、先行きの業績拡大を織り込み始めているといえる。

     空圧機器世界最大手のSMC。空気圧を使って押す、持ち上げる、つかむなどの動作を行うときに、重要なのがどのくらいの力や速さで動かすかを決める制御技術で、これにたけているのが同社だ。半導体や自動車、工作機械の製造ラインの自動化に貢献する。

    5Gで半導体などに恩恵

     半導体ではレーザーテックが上場来高値をばく進中だ。同社は半導体の微細化に不可欠なEUV(極端紫外線)露光装置向けの検査装置でシェア100%を誇る。半導体の線幅はこれまで10ナノメートル(ナノは10億分の1)が限界とされてきたが、EUV露光で理論上は3ナノメートルまでの微細化が可能になるという。微細化は半導体の性能向上に直結する。

     アンリツは通信系計測器の世界大手。特に次世代通信規格である5G分野では米キーサイト・テクノロジーと双璧だ。現時点の5Gは4G通信環境で動かす、いわば簡易版に過ぎないが、今春発表された次世代5Gの「フル規格」は、IoT(モノのインターネット)や自動運転などに展開する本格的なものだ。同社はフル規格の受注が2020年末くらいから入り始め、来期からは本格化すると予想する。

     5Gの基地局ビジネスでは中国ファーウェイが先行しているが、フル規格が動き出せば、市場の拡大で日本の半導体や電子部品企業にも恩恵があるとみられる。特にコンデンサーで世界最大手の村田製作所では、スマホのみならず車載用部品も拡大しそうだ。

     電気自動車(EV)では日本電産がEV駆動用モーター「E–Axle」(イーアクスル)で先行している。受注見込みが1600万台になったと発表しており、その多くが中国向けだという。中国の吉利汽車(ジーリー)の新型EVにもイーアクスルが採用されたことも明らかになった。

     米中対立が日本企業にとってプラス材料になっている面もある。米国は5月に米国製の製造装置を使ったファーウェイ向けの半導体の輸出禁止を発表。中国は半導体の国産化を推し進めているが、日本には半導体製造装置やウエハーなどは世界シェアトップか、それに準じる企業が多く、日本企業にとってはチャンスといえる。

    (和島英樹・経済ジャーナリスト)

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