見た目優先の外壁タイルに潜む危建/53
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我が国にマンションが登場したころ、その外装はほとんどがコンクリートに塗料を塗る「吹き付け塗装」だった。高度経済成長期に登場した「公団」はもちろん、関東大震災を教訓に政府主導で建設された同潤会アパートも外装は吹き付け。タイルは吹き付けに比べて高価だったこともあり、一部の高級物件にのみ使われていた。外壁タイルが高級物件という印象を決定的にしたのは、1965年に東京・渋谷区の表参道に建設された総タイル張りのマンション「コープオリンピア」。分譲価格が1億円を突破した、日本初の億ションとして高い注目を集めた。あるマンションデベロッパーが全ての物件をタイル張りにして分譲したところ、これが大ヒットし、全国に総タイル張りのマンションを展開していく。「外壁にタイルをたくさん使えば使うほど高級」という風潮が浸透していった。
しかしバブル景気に沸く89年にある事故が発生したことで潮目が変わる。北九州市の10階建ての団地で、最上階付近のタイルが縦5メートル、横8・5メートルにわたって落下。タイル片は通行人を直撃し、男女3人が死傷する大事故だった。これを契機にタイル張りの安全性が問われるようになる。その後もタイルの剥落事故は発生し、そのたびに「原因は施工不良か、経年劣化か」という議論がなされた。
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週刊エコノミスト
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