FRBの「平均物価目標」の狙いとリスク=愛宕伸康
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米連邦準備制度理事会(FRB)は8月27日、金融政策の中長期的な戦略に重要な変更を加えた。ポイントは2点ある。雇用最大化を重視する姿勢をこれまで以上に明確化したこと、そしてインフレ率が一時的に2%を上回っても簡単には引き締めに転じないことを約束する「平均物価目標」を採用したことだ。
具体的に見ていこう。FRBには「雇用最大化」と「物価安定」という二つの使命(デュアル・マンデート)がある。そのうち雇用最大化に関しては、「最大雇用からの『乖離(かいり)』を点検する」としていた表記を、「最大雇用からの『不足』を点検する」に修正した。ささいな変更のように見えるが、そうではない。「乖離」なら、実際の雇用が最大雇用を下回っても上回っても政策変更の材料になり得たが、これをあえて「不足」だけにしてしまうと、雇用がタイト化しても引き締めは考えないと暗に言っていることになる。
一方、もう一つの使命の「物価安定」については、単なる「2%の物価目標」から「一定期間を通じて平均2%のインフレ率」を目指す「平均物価目標」に切り替えた。物価目標の対象である「個人消費支出(PCE)デフレーター」は1年半以上も2%を上回っていない(図1)。このため今後2%を上回るような局面になっても、しばらくその状態が放置されることになる。FRBでは具体的な算定方法や平均する期間を公表しないとして…
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週刊エコノミスト
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