教養・歴史書評

「暴君」の実像に迫り史実を丹念に整理=本村凌二

 シェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』のせいでもなかろうが、かつてカエサルは英語読みのシーザーと表記された。そのうち「シーザーとは俺のことかとカエサルが言う」と駄洒落(だじゃれ)にされそうかも。

 カエサルほどの人物になると、玉ねぎの皮のごとく伝説に彩られている。小池和子『カエサル』(岩波新書、880円)は、その皮をはぎとり「内戦の時代を駆けぬけた政治家」の実像に迫る。それは、紀元前1世紀のローマ社会に生きた人間の一人として浮かばせることにもなる。

 若造のカエサルが絶大な権力をもつスッラの命に従わなかったとき、とりなす人々に向かって「カエサルの中には多くのマリウスがいる」とスッラが言い放ったらしい。彼の最大の政敵がマリウスであったから、少なくともカエサルの非凡さを感じとっていたのだろう。できすぎた話のようでもあるのだが。

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