教養・歴史 小柴さん追悼
ニュートリノをめぐる冒険/2 大気ニュートリノ問題とニュートリノ質量=須藤靖 サイエンス最前線
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前回の「ニュートリノをめぐる冒険①」は、素粒子としてのニュートリノ研究の歴史と、太陽ニュートリノと超新星ニュートリノの発見を紹介した。いよいよ今回は、梶田隆章氏のノーベル賞受賞対象となった大気ニュートリノ問題とニュートリノ質量について解説してみたい。
大気ニュートリノの謎
太陽ニュートリノは太陽の中心部で発生したニュートリノ、超新星ニュートリノは大質量星の最期の超新星爆発の際に発生したニュートリノであり、いずれも地球外の天体がその起源である。これに対して、大気ニュートリノは地球の大気中で発生したニュートリノである。そして、この大気ニュートリノこそ質量がゼロと考えられていたニュートリノに質量があることを証明するきっかけとなった。
実は宇宙には高いエネルギーを持った大量の粒子が飛び回っている。これらの粒子は宇宙線と呼ばれ、常に地球にも降り注いでいる。その際、宇宙線の主成分である陽子は、地球の大気中の原子核と衝突して、パイ粒子と呼ばれる粒子を生成する。正あるいは負電荷を帯びたパイ粒子はミュー粒子とミューニュートリノに崩壊する。さらにこのミュー粒子は、地表に到達する前に、電子、電子ニュートリノ、およびミューニュートリノに崩壊す…
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週刊エコノミスト
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