教養・歴史書評

令和時代も再検証必要 象徴天皇制の将来像=井上寿一

 昨年の令和時代の始まりは、象徴天皇制度の将来像を考える大きなきっかけだったはずである。ところが実際には今年に入ってからの「コロナ禍」の影響もあって、議論は後景に退きがちになっている。ここであらためて象徴天皇制度の将来像を考えてみたい。

 重要な手がかりとなるのが茶谷誠一編著『象徴天皇制のゆくえ』(志學館大学出版会、1500円)である。最初に読むべきは君塚直隆「第五章立憲君主制と象徴天皇制」だろう。同論考は、昭和天皇と明仁天皇がイギリス流の立憲君主制度を理想像の一つとしていたことを明らかにしている。令和時代においても同様であることが推測できる。

 次に「皇室外交」をテーマとする第一章と第二章に注目する。象徴天皇は憲法に定められた国事行為のほかのさまざまな公的行為によって、国民との結びつきを強める。そのような公的行為の一つに「皇室外交」がある。第一章は鳩山一郎=ダレス米国務長官顧問会談(1951年)に対する昭和天皇の関与を主題とする。同論考は象徴天皇の政治関与の直接的な影響に関して、否定的な結論を導き出している。第二章の分析の射程は長い。5…

残り390文字(全文864文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月9日号

EV失速の真相16 EV販売は企業ごとに明暗 利益を出せるのは3社程度■野辺継男20 高成長テスラに変調 HV好調のトヨタ株 5年ぶり時価総額逆転が視野に■遠藤功治22 最高益の真実 トヨタ、長期的に避けられない構造転換■中西孝樹25 中国市場 航続距離、コスト、充電性能 止まらない中国車の進化■湯 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事