令和時代も再検証必要 象徴天皇制の将来像=井上寿一
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昨年の令和時代の始まりは、象徴天皇制度の将来像を考える大きなきっかけだったはずである。ところが実際には今年に入ってからの「コロナ禍」の影響もあって、議論は後景に退きがちになっている。ここであらためて象徴天皇制度の将来像を考えてみたい。
重要な手がかりとなるのが茶谷誠一編著『象徴天皇制のゆくえ』(志學館大学出版会、1500円)である。最初に読むべきは君塚直隆「第五章立憲君主制と象徴天皇制」だろう。同論考は、昭和天皇と明仁天皇がイギリス流の立憲君主制度を理想像の一つとしていたことを明らかにしている。令和時代においても同様であることが推測できる。
次に「皇室外交」をテーマとする第一章と第二章に注目する。象徴天皇は憲法に定められた国事行為のほかのさまざまな公的行為によって、国民との結びつきを強める。そのような公的行為の一つに「皇室外交」がある。第一章は鳩山一郎=ダレス米国務長官顧問会談(1951年)に対する昭和天皇の関与を主題とする。同論考は象徴天皇の政治関与の直接的な影響に関して、否定的な結論を導き出している。第二章の分析の射程は長い。5…
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週刊エコノミスト
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