教養・歴史書評

コロナ禍の鬱屈した日々 市井の人々の物語にふける=楊逸

    ×月×日

     読書の秋。海のかなたで繰り広げられた米大統領選のバトルが気にかかり、いちいちニュースをチェックせずにはいられない。

     短編集『降るがいい』(佐々木譲、河出書房新社、1700円)を読む。

     まずは表題作。「きょうは御用納めの日。事実上の一年が終わる日だ」。勤め人なら「お疲れさま」と、奥さんの笑顔とともになみなみとついでくれた盃を上げて、一家だんらんを楽しむはずの日に、主人公の加藤孝志はなぜか飲み屋を回って人探しをしていた……。新しい年を迎える前に、妻子持ちの中年男性に突然降りかかった「再就職採用の取り消し」という不幸。そんな難局をどう乗り越えればいいのか、先が思いやられる。

    「反復」も、一度失業して次なる職を探す中年男性の物語である。仕事のできる男を自任し、大手広告代理店に勤める森田秀一は、「下請けのイベント会社の社員」だった二宮淳史を自分のセクションに転職を勧めたまではよかった。が、一緒に仕事するようになって、かつてイベントの現場で見せた「マネージャーとしてそつがなく、気が回って、想定外の事態やトラブルへの対応能力も優れて」いる彼の長所が裏目に出て過労になってしまう…

    残り770文字(全文1262文字)

    週刊エコノミスト

    週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
    有料会員になると、続きをお読みいただけます。

    ・会員限定の有料記事が読み放題
    ・1989年からの誌面掲載記事検索
    ・デジタル紙面で過去8号分のバックナンバーが読める

    通常価格 月額2,040円(税込)

    週刊エコノミスト最新号のご案内

    週刊エコノミスト最新号

    12月14日号

    税務調査 あなたの資産も丸裸18 「やりすぎ」節税は許さない 厳しく追及される富裕層 ■加藤 結花21 タワマン 過剰な節税は狙われる ■村田 晋一郎22 海外資産 86カ国・地域との情報交換が端緒 ■高鳥 拓也24 生前贈与 最強の節税策が使えなくなる前に ■山崎 信義27 見逃しがちな広大地還付 [目次を見る]

    デジタル紙面ビューアーで読む

    おすすめ情報

    最新の注目記事