教養・歴史書評

わが国独自の印判文化 その成立の歴史を探る=今谷明

     判子(はんこ)行政に対する批判や擁護の議論でかまびすしい。婚姻届や土地の登記など、印鑑を必要とする手続きは多い。印鑑業者が集中する山梨県の知事が“ハンコ追放”を主唱する河野太郎行政改革担当大臣に食ってかかったのが話題になっている。

     日本でいつごろから印判文化が成立したのかは微妙なところだ。律令制の開始とともに大陸から伝わったのが印判で、「漢委奴国王印(かんのわのなのこくおういん)」で知られるように、弥生時代から周知のことであった。奈良時代は軍隊の徴発に官印と駅鈴(えきれい)(公務出張に際して朝廷から与えられた鈴)が必要で、藤原仲麻呂の乱のように、反乱はしばしば鈴印争奪戦の形をとった。

     しかし、政治の世界で日本が一貫して印判主義だったかというとそうではなく、平安時代は貴族の社会で草名(そうみょう)という署名が登場し、それが発展して花押(かおう)(署名代わりの記号・符号)となった。欧米でいうサインに相当する。源頼朝や足利尊氏など武家の有力者はみんな花押を使って人民に臨んだ。ただし例外もあり、室町時代には禅僧や女性には花押を用いる習慣がなかった。

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