教養・歴史アートな時間

映画 この世界に残されて 強制収容所で生き残った男と女 淡い官能で描く再生への通過点=勝田友巳

     ホロコーストの生き残りを描いたハンガリー映画だが、ナチスも収容所も、映像はおろか言葉としても出てこない。深い絶望の中にいた二つの魂が再生するまでの、普遍的な物語だ。

     42歳のアルドと16歳のクララは、産婦人科医と患者として登場する。アルドはぶっきらぼう、クララは不機嫌そうだ。服装も部屋の内装もくすんだ色合いで、登場人物の表情は乏しい。映画はよそよそしく冷たい画面から始まり、観客は少しずつアルドとクララのことを知ってゆく。

     ある日クララは、アルドの診察が終わるのを待っていて、アルドの部屋に招かれる。クララは優秀だが周囲になじめない。大叔母と2人暮らしだが、教養のない叔母に不満を感じている。両親への投函(とうかん)されない手紙を書きため、帰りを待ち続けている。アルドもまた、人とのつながりを断ってひっそりと生きていた。荒れた時期もあったらしい。やがてアルドは、クララを引き取って一緒に暮らし始める。

    残り777文字(全文1179文字)

    週刊エコノミスト

    週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
    有料会員になると、続きをお読みいただけます。

    ・会員限定の有料記事が読み放題
    ・1989年からの誌面掲載記事検索
    ・デジタル紙面で過去8号分のバックナンバーが読める

    通常価格 月額2,040円(税込)

    週刊エコノミスト最新号のご案内

    週刊エコノミスト最新号

    3月9日号

    最強の米国株&経済16 ダウ3万8000ドルの声も 「買い参戦」する日本の個人 ■市川 明代/白鳥 達哉18 米国株 注目の30銘柄 宇宙旅行やアフリカ版「アマゾン」 ■岡元 兵八郎21 まだある注目銘柄 身近なアップル、ディズニー 国策のテスラやネクステラ ■佐藤 一樹25 ネット証券で買う 定額 [目次を見る]

    デジタル紙面ビューアーで読む

    おすすめ情報

    最新の注目記事