差別の実際解き明かす 詳細データと精緻な分析=荻上チキ
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優れた本を立て続けに読めた。一冊は『日常生活に埋め込まれたマイクロアグレッション』(デラルド・ウィン・スー著、明石書店、3500円)。最近、さまざまな差別について議論する際、取り上げられることが増えた概念である「マイクロアグレッション」について整理された本だ。
本書は「マイクロアグレッション」について、「ある人が集団に属していることを理由として、日常的な何気ないやりとりの一瞬の中で受ける中傷的メッセージ」と定義する。女性に対してだけ「ちゃん」付けで話す。タクシーが黒人の客をスルーする。女性の店長に対して「上の人を出して」と要求する。見た目が日本人ぽくないという理由で「日本語が上手ですね」と決めてかかった話しかけをされるといった具合に。しかしこうした言葉は、暗に相手を歓迎せず、格下のように位置付け、侮蔑的な評価を伝えるものだ。こうした言葉をぶつけられる側にとっては、紛れもなく差別体験だと言えるだろう。
大袈裟(おおげさ)だと思うだろうか。例えば街を歩いて、誰かと肩がぶつかったとしよう。その一度切りの体験を「暴力だ」とは言い難いかもしれない。しかしそれが、「一日に数回は、誰かにぶつかられる」という経験をしたらどうだろう。しかも、同じような話が、その人と似た属性の人に偏って生じていたとしたら。外を歩くのが嫌になったとしてもおかしくない。そして、例えば女性であるというだけで、街で意図的に誰かにぶつか…
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週刊エコノミスト
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