教養・歴史書評

コロナ禍対策 本の配達が一部で復活=永江朗

     コロナ禍の街を「Uber Eats(ウーバーイーツ)」の配達員が自転車で駆け抜けていく。すっかり定着した光景だ。食べ物だけでなく、本も届けてくれるといいのに、と考えるのは筆者だけではないだろう。

     そういえばドイツ在住の作家、多和田葉子氏は朝日新聞連載のエッセーでコロナ禍のベルリンについて〈行きつけの書店は店舗は閉めているがメールや電話で本を注文すると取り寄せて家まで届けてくれる〉と書いていた(「多和田葉子のベルリン通信」2020年4月14日)。もちろん流通システムも利益率なども日本とは異なるが、これを読んでうらやましいと感じた日本の読者は多いだろう。

     ……と思っていたら、丸善ジュンク堂書店は2月2日、都内の3店舗で配達サービスの「エニキャリ」と提携して、店頭の在庫を自宅やオフィスまで配達するサービスを始めた。最短45分で本が届くという。

     利用者は通販サイト「honto」の「店頭取り置き」サービスから本を注文して配送を依頼する。本の受け取り時に、配送スタッフに書籍代と配送料を支払う。第1弾となる3店舗は、丸善丸の内本店、丸善日本橋店、MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店。ただし配達可能なエリアは各店の近隣に限られる。

     実はしばらく前まで、配達サービスをする書店は多かった。特に個人経営の小規模店では、週刊誌や月刊誌を毎号配達し、そのついでに書籍の注文も取るというサービスが珍しくなかった。そういう店では顧客との強固な関係ができていて、それが事典・図鑑類や全集など大型企画商品の販売にもつながっていた。

     ところが1990年代に入ると、配達をやめる書店が増えてきた。共稼ぎ世帯が増えて配達や集金のために客を訪ねても留守の家庭が多くなったことや、書店経営者の高齢化で配達が難しくなったことなどが背景にある。そして00年代になると、売り上げの低迷を人件費の圧縮(つまり従業員減らし)で対処しようという書店が増え、配達は過去のものになっていったのだった。

     コロナ禍を機に、配達の復活を小さな書店の活性化につなげることはできないだろうか。


     この欄は「海外出版事情」と隔週で掲載します。

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