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釣りの人気がV字回復? 魚との駆け引きが超魅力=釣人割烹

堤防釣りは家族連れにも人気 釣りメディア「ORETSURI(俺釣)」提供
堤防釣りは家族連れにも人気 釣りメディア「ORETSURI(俺釣)」提供

 新型コロナウイルスの影響で、その魅力が見直されているレジャーの一つが「釣り」だ。

 そもそも近年、釣りはレジャーとしては衰退傾向をたどっていた。1970~90年代には、漫画「釣りキチ三平」(講談社)やブラックバス釣りをきっかけにブームが巻き起こり、 釣り人口は激増した。しかし、日本生産性本部の「レジャー白書」によると、釣り人口は2006年に1290万人だったが、その後は減り続け、18年には620万人と半減している。

 そのようななか、新型コロナで国内旅行や外食を控える動きに反比例し、感染リスクの低い手軽なレジャーとして釣り人気が再燃しつつある。実際、東京湾沿岸で釣りができる堤防や施設は、週末になると釣り客でいっぱいだ。

 釣り関連の事業も好調のようだ。日本釣用品工業会の調査では、20年の釣り用品国内出荷規模は前年比106・7%の1491億3000万円と7%弱のプラス成長が見込まれ、21年は1568億2000万円とさらなる成長が予測されている。また、日経新聞電子版は今年1月、釣り具大手グローブライドが投資額20億円でベトナムに新工場を建設するという記事を掲載した。建設の背景には釣り具の販売の伸びがあり、新工場により全体の生産能力が1割高まるとしている。

女性にも人気

女性や子供の釣り客も増えた 筆者撮影
女性や子供の釣り客も増えた 筆者撮影

 一昔前の釣りと言えば、ミミズやゴカイを触って手が汚れる、魚臭いというイメージが当たり前だった。しかし、道具の進化で釣り方は多様化し、疑似餌(ルアー)を使ったスマートな釣りは女性にも人気だ。

ルアー(疑似餌)はさまざまな場面で使える 筆者提供
ルアー(疑似餌)はさまざまな場面で使える 筆者提供

 ブラックバスの人気は下火になったが、ルアー釣りは海水、淡水、汽水域(河口で淡水と海水が入り混じる場所)を問わず、あらゆる場所に進出。ルアーも金属でできたカラフルな「ジグ」やゴムでできた「ワーム」など無数に作られ、シーバス(海のブラックバス)と呼ばれるスズキをはじめ、ブリやマダイ、ヒラメ、タチウオ、アジなどありとあらゆる魚種を狙えるようになっている。

 もう一つ、釣り糸の進化が釣りそのものを変えつつある。00年ごろに登場したPEライン(ポリエチレンの編み糸)が代表格だ。以前は透明なナイロン糸が主流だったが、同じ引っ張り強度で比べるとPEはナイロンより圧倒的に細い。このため川や潮の流れの速いところでも水の抵抗が小さく、ナイロンより軽いオモリが使え、ルアーを投げるのにも適している。

釣り具も小型化、軽量化を遂げている 筆者提供
釣り具も小型化、軽量化を遂げている 筆者提供

密にならないレジャー

 これに合わせてタックル(竿(さお)やリールなど魚を釣る道具一式)も小型化、軽量化を遂げている。太いナイロン糸で大型魚を釣るには大型のリール、重たいオモリ、それに耐えられる長くて重い竿が必要だったが、今やライトタックルで釣れるようになり、ゲーム性が高まっている。

三つの入り口

 とはいえ、初めて釣りをやるとなると、魚種によって釣り方や道具もさまざま。技術的に釣るのが難しい魚もおり、ハードルが高いと感じるだろう。そこで、初心者でも釣りを楽しめる入門に三つの入り口を紹介したい。

 一つめは「堤防釣り」だ。5月以降は、浜から沖へ延びる堤防や漁港の岸壁で、家族や友人とのんびり釣りを楽しむのにもってこいの季節だ。回遊してくるイワシやアジ、サバは比較的簡単に釣ることができ、海釣りの入門編として最適と言える。

 竿とリールは釣具店で売っている安価なセットで十分。今はネットで釣り動画がたくさんアップされ、仕掛けや餌、釣り方が簡単に予習できる。クーラーボックスがあれば釣った魚を家に持ち帰り、料理して食べることもできる。

 とはいえ、新型コロナの影響で釣り禁止となった堤防や岸壁も多く、釣りができる場所には休日、大勢の家族連れや釣り人が押しかけて混雑する。

 そこでお勧めするのが「海釣り施設」だ。安い料金で海に張り出した巨大桟橋からさまざまな魚が釣れる。関東地方には、東京湾岸や外房などで計20カ所以上ある。釣り方や釣れる魚は、施設に問い合わせると教えてくれる。

 二つめの入り口は「管理釣り場」。これは海ではなく川や池に仕切りを設け、トラウト(マス)やヤマメなどの淡水魚を放流している施設で、略して「管釣り」と呼ばれる。ありていに言えば「釣り堀」だが、林間の澄んだ空気や清流など豊かな自然を楽しみながら餌釣りやルアー釣りを楽しめる。

 釣った魚はその場で串に刺し、塩焼きにして食べたり、持ち帰って料理したりすることもできる。海よりも山が好きだという人にはぜひお勧めする。

 三つめは釣り船(遊漁船)だ。早朝、漁港近くの船宿に集合して船に乗り、沖に出て季節のさまざまな魚を釣る。どの船宿もしっかりコロナ対策をとっており、海に出るので感染の心配は少ない。

 船釣りの最大の魅力は、船長が魚の釣れるポイントまで案内してくれること。堤防や岸壁から釣るよりも確実な釣果が得られる。料金は5000~1万円ほどで、女性や子供は半額という設定の船宿が大半だ。

 船酔いする人も、酔い止めをきちんと飲めばさほど心配する必要はない。沖に出て朝焼けに染まった海を眺め、気持ちのよい潮風に当たる。日常から完全に解き放たれた爽快感は何物にも代え難い。竿やリールがなくても、船宿で借りることもできるし、仕掛けも売っている。釣り方は船宿や船長が教えてくれるが、経験者と一緒に乗ると上達が早いだろう。

 実際に釣りをすると、魚との駆け引きの面白さのとりこになるはずだ。

(釣人割烹・サラリーマン兼業釣りライター)


ルポ 東京湾アジ釣り 五感を総動員する最高レジャー 釣ってさばいて料理を楽しむ

朝日がまぶしい時間に港を出る 筆者撮影
朝日がまぶしい時間に港を出る 筆者撮影

 3月の週末、横須賀市の大津漁港から乗合船で東京湾へ出た。狙うはマアジ。乗り合いの遊漁船は釣る魚も時間もさまざまだが、この日に乗った船は午前7時に出港し、11時半に戻る。アジは釣りやすく、海の上にいる時間も短いので初心者向きだ。

 船は港を出て朝日に輝く東京湾を気持ちよく進む。船釣りでは天気にかかわらず上下の雨がっぱに長靴が標準装備。そして、船宿で借りられるライフジャケットが必須となる。

 出港して15分ほどでポイントに到着。快晴で富士山が大きく見えた。

クーラーボックスにいっぱいのアジ 筆者撮影
クーラーボックスにいっぱいのアジ 筆者撮影

 東京湾のアジ釣りは、リールに巻いた道糸の先に「天秤(てんびん)」をつけ、コマセ(寄せ餌のイワシミンチ)を入れるカゴとオモリが一体化した「アンドンビシ」という道具をぶら下げるスタイルが一般的。天秤から延びた腕の先に2本針の仕掛けを接続する。仕掛けの長さは1.5メートルほど。針には食紅で赤く染めたイカの短冊(イカタン)をつけ、各自のバケツからコマセをカゴに詰める。これを船長の合図で海へ投入する。

 アジの遊泳層は底から3メートルほど。仕掛けが海底についたらリールを巻き、竿(さお)を数回しゃくる。振り出されたコマセの煙幕の中を漂うイカタンに食いつかせるのだ。

 しばらくすると魚が集まってくる。針に掛かると手に持つ竿にグーッと重みが乗る。リールをゆっくり巻くと途中で魚が暴れ、その手応えが竿先にグングンと伝わってくる。2本針の両方に魚がかかるとかなりの重みで、竿が大きくしなる。

 慎重にリールを巻き上げていき、仕掛けを手に持って魚を抜き上げて取り込む。銀色の魚体が輝き、足もとで跳ね回る。この日は、仕掛けを入れたとたんにすぐに針にかかる、いわゆる“入れ食い”の状態だった。バケツにどんどん魚がたまっていく。結局、釣果は15~25センチのマアジが50匹ほど。クーラーボックスがいっぱいになる大漁だった。

料理も釣りの一部

料理も釣りの一部 筆者撮影
料理も釣りの一部 筆者撮影

 ホクホク顔で自宅に戻り、さっそく刺し身やフライ、干物にする。釣りたての魚は、スーパーや鮮魚店で買うものとは比べ物にならないほどおいしい。流通過程の冷解凍で身が傷むことがないからで、こればかりは実際に釣りをしないと分からない。

刺し身は解凍では味わえないうまさがある 筆者撮影
刺し身は解凍では味わえないうまさがある 筆者撮影
カルパッチョなど普段はあまり食べることのない料理に挑戦してみてもいいだろう 筆者撮影
カルパッチョなど普段はあまり食べることのない料理に挑戦してみてもいいだろう 筆者撮影

 魚をさばくのが難しいと思う人も多いだろうが、ネット上に初心者にも分かりやすく解説した動画などがたくさん公開されており、すぐにできるようになる。

 アジの刺し身には脂がたっぷりのり、フライはふっくらジューシー。子供たちはあっという間に完食した。釣ってさばいて料理を楽しむ釣りは、五感を総動員する最高のレジャーだ。

(釣人割烹)

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