戦前の飛行士を追体験 圧倒的スケールで描く中国舞台の冒険活劇
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1936年の中国が舞台 大陸の大空を舞う活劇=加藤徹
新野剛志『空の王』(中央公論新社、2310円)は、1936年の中国を舞台とする航空冒険活劇だ。
主人公の鷲尾順之介は、新聞社専属の飛行士。まだ写真の電送技術がなかった当時、日本の各新聞社は飛行機でニュース写真を運んだ。GPS(全地球測位システム)もないプロペラ機の時代、速さは飛行士の腕の見せ所だった。
空の男・鷲尾は、満州国の奉天のナイトクラブで、謎の美女・宋麗琳と出会う。その時から鷲尾の運命は変わる。鷲尾は、関東軍の将校から、重さ30キロ程度の「荷物」を運ぶ密命を受ける。荷物の中身も目的も秘密。広大な中国大陸を飛んだ鷲尾は、着陸先で麗琳と再会。彼女の正体はモンゴルの旧王族だった。麗琳の悲願は、ソ連と中国に分割されたモンゴル民族の独立を回復すること。鷲尾が運ぶ「荷物」の正体は、モンゴル独立の切…
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週刊エコノミスト
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