教養・歴史書評

膨大な史料踏破して迫る 「忍びの者」の実情=今谷明

 伊賀(現三重県西部)といえば、近江甲賀(滋賀県南部)と並んで“忍者”の里として有名である。歴史的に地味な地域であるが、古代には壬申(じんしん)の乱で大海人皇子(おおあまのみこ)(のちの天武天皇)が逃亡した通路にあたり、また東大寺に大量の木材を供給する山林荘園(伊賀黒田荘)の地でもあって、地政学的に重要な場所であった。

 室町時代の守護は仁木氏(につきし)であるが、応仁の乱などでも大した役割は果たさず、戦国期にはこの地に大名が出現せず、土豪・地侍(じざむらい)が幅を利かす一揆の国となり、ひいて忍者の伝承を生んだと考えられる。

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