自治体の混浴制限年齢引き下げ相次ぐ=齋藤信世
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混浴制限 戸惑う外国人や盗撮被害 自治体で相次ぐ年齢の引き下げ=斎藤信世
昨年12月に厚生労働省が、男女の混浴制限年齢の目安を10歳以上から7歳以上に引き下げたことを受け、自治体は条例の見直しを迫られている。7月1日には、沖縄県や福岡県、茨城県などが改正条例を施行した。
男女が混浴できる年齢については、公衆浴場法に基づき各地方自治体がそれぞれ規定を定めているが、自治体によって異なる制限年齢などが課題となってきた。
栃木は12歳以上
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京都府が7歳以上の男女の混浴を制限するのに対し、山形県は11歳まで、栃木県は12歳までは混浴を認めている。また、福島県や奈良県などは、そもそも条例に年齢に関する記載がない。
そのため規則は施設によってさまざまで、福島県にあるリゾートホテル「裏磐梯グランデコ東急ホテル」では、小学2年生までを混浴可能とする一方で、温泉施設「スパリゾートハワイアンズ」では、浴場や更衣室への異性の立ち入りを9歳まで認めている。
聖心女子大学の植田誠治教授は、「国際的にみると珍しいが、日本には温泉文化というものがあり、歴史も長い。ただ、(子どもの混浴については)発育発達状況や、恥ずかしさにかかわることであり、また性的犯罪が増加している背景を考えると、一定の基準が必要」と指摘する。
植田教授らは2020年に日本で初めて、公衆浴場における混浴規制に関する自治体の実態を明らかにする研究を発表した。その中で、「混浴を禁止にするべき年齢」について、成人男女を対象に調査を行ったところ、回答では「6歳」が最も多く、次いで「7歳」「5歳」という結果となった。
他方、子どもを対象に「異性混浴を恥ずかしいと思い始めた年齢」を調査したところ、最多が「6歳」で、「7歳」「5歳」「8歳」がこれに続いた。植田教授らは、これらの研究結果を踏まえ、「混浴禁止は6歳以上(ただし6歳でも小学校入学前は可)とすることが妥当であると考えられる」との報告をまとめた。
東京都は7歳以上に
厚労省は植田教授らの研究結果などを踏まえ、昨年12月10日に「公衆浴場における衛生等管理要領等」において、男女混浴の目安となる制限年齢を「おおむね10歳以上」から「おおむね7歳以上」に引き下げた旨を自治体に通知した。
植田教授は「国が出した条例改正案は“おおむね”という表現を使っており、曖昧な部分はある」と述べる一方で、「子どもたちの発育発達状況は個人差が非常に大きい。また、障害がある子どもや一人親家庭など、さまざまな事情がある。完全に年齢制限を決めて罰則を設けるというのは、難しいのではないか」との見方を示す。
厚労省の通知を受け、各自治体は今年に入り条例改正へと動いている。
東京都は22年1月1日、公衆浴場での混浴禁止年齢を現行の10歳以上から7歳以上に引き下げる。条例改正にあたり募集したパブリックコメン…
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週刊エコノミスト
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