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週刊エコノミスト Online 闘論席

犠牲者を出してまでやらねばならぬ大会などあるのか 忘れられた福田の言葉=片山杜秀

撮影 中村琢磨
撮影 中村琢磨

片山杜秀の闘論席

「人の命は地球より重い」。福田赳夫首相(当時)の名言である。1977年、パリ発東京行きの日本航空の旅客機が日本赤軍に乗っ取られた。要求の肝は、日本で捕らえられている同志9人の解放。法治国家としてはありえない。でも、日本政府が応じなければ、乗客・乗員を順次殺害するという。

 はて、どうする?「テロに屈するな」と叫んでも後の祭り。乗っ取りを防げなかった段階で、既に負けている。いまさら合法性や国家の意気地にこだわっても傷口を広げるだけだ。要求を突っぱねればゲリラは投降するのではないかなどと希望的観測をしても始まらない。

 そんなとき民主政治は、国民のたった一人の命でさえ、賭け金にして危険にさらすべきではないのだ。そこで名言が生まれた。福田首相は意地も体裁もかなぐり捨て、超法規的措置を大胆に決断した。指名された9人のうち、釈放されるのを拒否した3人を除く、6人を解放した。人質は全員助かった。

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