知財の「訴訟大国」汚名返上へ 中国が本気の取り締まり=真家陽一
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著作権法改正で取り締まり強化 知財の「訴訟大国」汚名返上へ=真家陽一
中国は世界トップクラスの知的財産権の「訴訟大国」だ。2020年の訴訟件数はコロナ禍にもかかわらず、前年比11・1%増の44万3326件に達した。米国(9964件)および日本(493件)と比較すると、それぞれ約44倍、900倍弱と桁違いに多い。訴訟の内訳をみると、著作権が31万3497件と全体の70・7%を占める。他方、商標権は17・6%、専利(特許・実用新案・意匠)権は6・4%にとどまる。
中国における知財問題としては、商標権などの産業財産権を侵害する「模倣品」被害のイメージが強いが、訴訟ベースでみると、著作権を侵害する「海賊版」被害の方が深刻な問題だ。実際、中国では、映像、出版、音楽、ゲームなど、あらゆるコンテンツ分野に非正規の海賊版が氾濫している。
日本企業にとっても著作権侵害は対中ビジネスにおける課題だ。中国に進出する日本企業で構成する中国日本商会は、直面している課題解決のための建議を中国政府に対して取りまとめた「中国経済と日本企業白書」を10年より発行している。6月16日に発行された21年版は「中国市場には日本のコンテンツに対する強いニーズがあるが、規制や参入障壁により普及度は低く、そのため海賊版や違法配信が蔓延(まんえん)する状況が続いている」と指摘。著作権保護体制の整備・促進や非正規コンテンツの市場からの排除などを建議している。
とはいえ、中国政府としても、決して著作権侵害問題を放置しているわけではない。訴訟の増加は国内での著作権意識の高まりを示すものであり、国家戦略として知財強国を目指す中、海賊…
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週刊エコノミスト
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