安全保障や経済、外交にも影響 環境対応の先に戦略的利益=岸田英明
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7月1日に北京で開かれた中国共産党成立100周年記念式典で、習近平総書記が党の歴史や使命について語った。歴代指導者の統治思想のほか、社会主義市場経済や一帯一路など、共産党が時代環境の変化に応じて導入してきた仕組みや理念が多数言及されていた。そうしたものの一つに「生態文明」建設がある。
生態文明は、最初に胡錦濤前総書記が言及したもので、「浪費と汚染の防止」と「経済社会の発展」が両立する文明の在り方を指し、現在では党規約と憲法の両方に記載されている。習近平政権は生態文明、環境問題重視の姿勢を一層鮮明にしている。特に2020年9月に、先進国と異なりまだ二酸化炭素(CO2)排出が増えている状況下で「60年炭素中立」目標を宣言したことは、内外で大きな反響を呼んだ。
中国が環境重視を強めているのは、幾つかの戦略的目的があり、かつ、それらの重要性が近年高まっていることがある。人民の幸福、エネルギー安全保障、グリーン投資、国際協調などであり、いずれも共産党にとって最重要の統治課題である「国家の安全と発展」に関わっている。
習氏は折に触れて「青山緑水(豊かな自然)は人民の幸福な暮らしの必要条件である」と語る。革命と建国が過去となり、高度成長期が過ぎた今、共産党は求心力を維持すべく、「人民の幸福」に奉仕する姿勢のアピールを強めており、環境対応は重要な一環を成す。
中国のあるシンクタンクの試算では、60年炭素中立に向け、中国の1次エネルギー消費に占める非化石エネルギー比率は20年の15・9%から、60年には81%まで高まる。その導入拡大はCO2排出削減だけではなく、エネルギー安保上も大きな意味を持…
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週刊エコノミスト
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