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わずか20分でプリーツスカートの注文が30万着 「JK制服」が中国の10代に流行している理由とは=岩下祐一

都市部ではJK制服姿の女性を頻繁に見かけるようになった 筆者撮影
都市部ではJK制服姿の女性を頻繁に見かけるようになった 筆者撮影

20分でスカートの注文30万着 「JK制服」が10代に流行=岩下祐一

 中国では、10代女性の間で制服風ファッションが流行し、社会現象になっている。

 制服風ファッションは、中国で“JK制服”と呼ばれている。JKとは日本語の女子高校生のローマ字から取った語だ。漢民族の伝統衣装「漢服」と、「ロリータ服」を合わせた三つが好きな女性たちは、自らを「三坑少女」と称している。「坑」とは穴の意味で、そのファッションをとことん追求するというニュアンスがある。

「三坑」の中でJK制服は、日常的に着やすく、値段も手ごろであることから愛好者が多い。当初は日本のアニメや漫画好きの「コスプレ」だったが、ここ数年は一般にも広まった。

 背景には、Z世代(1995年以降生まれ)が、日本のアニメや漫画を通じ、日本の学生服に憧れていることがある。中国の学生服はジャージーの運動着がメインで、「見た目が良くない」(上海の30代男性)と不評だ。

 JK制服ブランド「温柔一刀」が2020年4月、アリババ集団のネット通販サイト「タオバオ(淘宝網)」の店舗で100元強(約1700円)のプリーツスカート(ウエストから裾にかけて縦折りのひだが入った制服風スカート)の予約販売を実施したところ、開始からわずか20分で受注量が30万着を超えた。これが話題を呼び、一獲千金を狙う新規参入が相次いだ。

 地元メディアによると、タオバオのJK制服の20年4~6月取扱高は、前年同期に比べ225%増えた。巣ごもり消費も影響したようだ。タオバオのJK制服店舗は17年は100店弱だったが、20年は1000店を超えた。JK制服市場が20年に200億元(約3400億円)規模になったとの報道もある。

 一方、市場は20年後半から過当競争に陥っている。プリーツスカートの縫製を手掛ける蘇州聖巧依服飾の経営者、李安益氏は「プリーツスカートは昨年4月から急増し、6~9月には月産3万枚になった。その後は落ち着き、1万枚以下に落ち込んだ」と明かす。顧客は在庫を抱えているようで「今年は新製品を開発していない」(李氏)。

高価格帯も登場

 ただJK制服は、消えることはなさそうだ。プリーツスカートをTシャツと組み合わせて着るなど、ファッションアイテムとして浸透しつつあるからだ。

 本物志向で高価格帯を打ち出すブランドも現れた。上海美事商貿のブランド「今日JK」は昨年、タオバオでの販売を始めた。10代の2人の娘を持つ王彦総経理は「親御さんが安心して娘に着させられる品質を提供する」と話す。

 デザイナーブランドのセレクトショップを展開する北京愛上溥科技は今年6月、JK制服ブランドを集めたショップ「東兮学院」を北京市中心部の「国貿商城」で開業した。創業者の続陽氏は「富裕層の子弟の消費力は侮れない。当店の客単価は1000~2000元」と言う。

 こうしたブランドは、プリーツスカートの価格が250~300元で、一般的な価格の2~3倍する。日本向けのプリーツ加工工場を活用するなど、こだわりが強い。JK制服は、二極化が進みながら、10代のファッションとして定着していく可能性がある。

(岩下祐一・「繊維ニュース」上海支局長)

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