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アメリカの中学生はなぜギリシャの地理を学ぶのか=鈴木洋之

中国と米国に挟まれた日本。地図の見え方は?
中国と米国に挟まれた日本。地図の見え方は?

対中国、政治と経済性 はざまで悩む民間企業=鈴木洋之

 ギリシャの地図を見て、次の四つの質問に回答せよ。(1)ギリシャの地理的な特徴は (三つ以上)、(2)問題(1)が古代ギリシャの人々のコミュニケーションに与えた影響は、(3)古代ギリシャ経済の特徴は、(4)古代ギリシャの政治的発展の特徴は──。これは、当地の公立中学校1年生の社会科の普段の宿題だ。そして授業はアテネとスパルタの攻防へと展開していく。

基礎教育で地政学

 地図を見て、そして海洋国家と内陸国家の攻防の歴史を通じて、何が見えてくるか。これを考えるのは地政学の基本とも言えるが、米国がその発想を学校教育の早い段階からトレーニングしている点に、ある意味、感心する。批判を承知で極めて簡略化して言えば、海洋国家である米国にとって、地政学上の最優先事項は「ユーラシア大陸に覇権国家を誕生させないこと」なのだ。

 バイデン政権は、トランプ政権時からの対中強硬政策を継続し、産業サプライチェーンの米中デカップリング(切り離し)を加速させている。7月中旬、ホワイトハウスは、「新疆サプライチェーン・ビジネス勧告」(新疆勧告)と「香港ビジネス勧告」(香港勧告)という産業界への勧告2件を発表した。

 新疆勧告では、新疆ウイグル自治区で強制労働が広範に行われていることを指摘し、新疆に関わるサプライチェーン、投資などから撤退しない企業は、米国法に違反するリスクを負うと警告する。

 香港勧告では、香港で事業を営む者は、潜在的な法務・財務・レピュテーション(評判)リスクを認識しておくべきと指摘する。また、今年6月に中国政府が制定・公布した反外国制裁法が米企業の事…

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