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改定エネルギー基本計画 「EV全部は間違い」 豊田会長発言と電力不足=土守豪

EV拡大策に異議を唱えた豊田章男会長
EV拡大策に異議を唱えた豊田章男会長

改定エネルギー基本計画 「EV全部は間違い」 豊田会長発言と電力不足=土守豪

 新たなエネルギー基本計画が10月中にも閣議決定される見通しだが、これを意識してか、日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)が、9月9日の定例記者会見で、「全部EV(電気自動車)は間違い」と疑問を呈した。

 背景には雇用問題があるが、もう一つの課題として、急激なEVの拡大が真夏や厳冬期の電力需要ピーク時間帯に、電力不足を引き起こす懸念があることだ。

 豊田氏は昨年12月17日の記者懇談会で、「全ての乗用車をEV化した場合、電力需要が10~15%増え、夏の電力需要ピーク時に電力不足が起きる。解消するためには、原発でプラス10基、火力発電ではプラス20基が必要」と述べている。

 太陽光発電や風力発電は天候により発電量が変動するので、大量に普及したEVがいっせいに充電した場合、急激に増加した電力需要に合わせた供給ができない。火力発電はそれが可能だ。

 豊田氏が昨年12月に発言した時点では、「原発10基」「火力20基」は、あくまで旧エネルギー基本計画の古い電力需給・電源構成予測を参考に算出した数字だ。

 8月にまとまった新エネルギー基本計画案では、火力発電はより一層削減される。

 2030年度の電源構成比率で、石炭火力発電は19年度の32%から19%に、天然ガス火力発電は同37%から20%に大幅低下する。

 太陽光・風力発電などの再生可能エネルギーは、19年度18%から30年度36〜38%に激増する見通しだ。豊田氏が会見で苦言を呈したのも無理からぬ話だ。

 三菱総合研究所によると、「EVの充電時間が夕方に集中すると、太陽光発電の出力が落ちる時刻と重なり電力不足の可能性がある」(担当研究員)としつつも、「充電時刻を分散化させる料金体系の導入、蓄電池や分散型電源を最適運用する仮想発電所(VPP)の拡大などで、電力不足を回避することは可能だ」(同)と指摘する。

 また、2050年の長期的展望に立ったある試算では、EV大量普及で電力需要は急増するが、人口減少や経済規模の縮小、省エネの進展による電力需要減少で相殺されて、全体では電力需要は横ばいか微増程度で済むとの見方もある。

 豊田氏は9月9日の会見で「来月には、カーボンニュートラルの出発点であるエネルギーについて、自動車産業を軸にした課題を提示させていただく」と述べている。

 火力発電が激減する中、EVに必要な電力をどう確保するのか、十分な検討が必要だ。

(土守豪・ジャーナリスト)

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