「生理って実際いくらかかるの?」 女子大学生の“生理の貧困”のリアル
SNS上で話題になった「生理の貧困」。実際、「生理」の経済負担は女子大学生にとってどれほど大きいものなのか。現役大学生である筆者が実際に調べてみると……。
「生理の貧困」についてのツイートが話題に
今年6月、ツイッター上で、ある投稿が話題になった。
「生理の貧困に関して、金銭面の話で『たかが数百円』と思ってる人と実際に必要なものとでだいぶギャップがあるなぁと。諸症状が酷いとそっちの対処がメインになって、肝心の衛生用品の優先度が低くなりがちなんよ。薬代が高いから、最悪交換頻度下げても不快感を我慢すればいい衛生用品に皺寄せが行く」(KYCO @KYCO_slkmt)
このツイートには、1.5万件のリツイート、2.7万件のいいねがついている(8月中旬現在)。
投稿のきっかけについてKYCOさんに取材したところ、「生理の貧困では無く、生理に対する考えの貧困だ」といった年配男性の新聞の投書のツイートをみて、それに反論しようと考えたのだという。実際に投稿してみると、「知らなかった。画像左側の認識でいた」といった感想が男女を問わず寄せられた。引用リツイートでは、「もっとこの現実を世の中に知ってほしい」「本当に女性はお金がかかる」といった声も多数あった。
そもそも「生理の貧困」とは一体何なのか。なぜこれほど注目を集めるのだろうか。
「生理の貧困」=経済的理由によって十分に生理用品などにアクセスできない状態
生理用品の軽減税率対象化を目指す慈善団体「#みんなの生理」によると、「生理の貧困」とは、「経済的理由によって十分に生理用品や生理に対する教育にアクセスできない状態」のことだとされている。
この説明だけではまだ、イメージしにくい人もいるだろう。SNS上では「たかが数百円のものも買えないのにスマホ代は払えるのか」といった批判も見受けられる。だが、スマホは今やオンライン授業の受講や就職活動などに欠かせない、生きる上で必須のツールであり、比較の対象にはならない。そもそも生活費のなかで衛生用品を後回しにしなければならない状態こそが、「生理の貧困」であり、解決すべき課題なのである。
経済的理由で生理用品の代わりにティッシュなどを使う例も
ところで、実際日本において「生理の貧困」に悩む人はどれだけいるのだろうか。これについては、「#みんなの生理」が日本の若年女性(高校生以上の学生)671人にアンケート調査を実施している(2021年3月2日発表)。
この調査によれば、アンケート回答者の約5人に1人が「過去1年以内に金銭的理由で生理用品の入手に苦労したことがある」と回答、さらに約3人に1人が「過去1年以内に金銭的な理由で生理用品でないものを使った」と回答している。実際に、筆者の友人の中にも、「生理用品の代用品としてティッシュやトイレットペーパーを使用したことがある」という人がいる。
生理用品にはどれだけお金がかかるのか?
経済的理由で買えない学生がいるというが、実際生理はどれだけ家計を圧迫しているのだろうか。KYCOさんのツイートではおおまかな金額が簡単に紹介されているが、どの商品にどれだけのお金がかかるかまでは紹介されていない。そこで、筆者は実際に横浜市内の大手ドラッグストア3店舗で、生理用品それぞれにかかる金額を調査した。
ナプキン・タンポンの金額
ひとつ目は、一般的に「生理用品」と聞いたら連想するであろうナプキンとタンポンだ。まずナプキンは、経血量や使用時間によって付け替えるため、昼用と夜用が存在する。今回調査したドラッグストアには、平均して約100種類ものナプキンがあり、1袋にはおよそ10枚から20枚ほどが入っていた(サイズの大きいものほど1袋当たりの個数が少ないのが一般的)。次にタンポンだが、一つで長時間使用することができる(最長約8時間)点と1袋におよそ20個~40個入っている点が特徴だ。
今回の調査では、ナプキンやタンポン1袋当たりの値段を平均した。その結果、ナプキンは1袋当たり昼用が約350円、夜用が約500円であり、タンポンは1袋当たり約800円ほどであることが判明した。KYCOさんのツイートでは、「特価120円を想像する人もいる」と記載されていたが、今回の対象店舗では安くても280円ほどであった。
痛み止め・ピルの種類と金額
生理には生理痛が伴う場合がある。人によっては立っていられなくなったり、仕事や学業に専念できなくなったりする痛みだ。それは腹部の痛みだけではなく、頭痛などほかの部位の痛みにつながることもある。そのため、生理痛がひどい場合は痛み止めを服用する女性も多い。マーケティングリサーチ・市場調査会社「ハー・ストーリィ」の調査によると、生理のたびに生理痛を感じる人は20代の約48%、生理痛があるときに薬を服用する人は全体の約49%に上る。市販の鎮痛剤は、1箱あたり60錠入りだと平均で1800円ほどする商品もあった。
また、人によっては例えば試験などの重大イベントに備えて生理のタイミングをコントロールしたり、生理痛を和らげたりするために、低用量ピルを服用する場合もある(ただし、日本ではまだ普及率は3~4%と低い)。ピルだけで1カ月あたり約2000円かかり、医師の診察を受ければ診察料がそれに加算されることになる。
下着、その他の金額
経血の漏れをふせいだり、腹部を温めたりするために、生理用の下着(サニタリーショーツ)というものも販売されている。この下着はポリエステルやポリウレタンなどのはっ水素材でつくられており、1枚あたり約1500円する。高いものでは3000円を超えるものもあり、その幅は大きい。
また、生理用品とともに購入されるものとしてデリケートゾーン用の洗剤もある。およそ1000円前後で販売されているもので、蒸れやかゆみを解消するために用いられている。
多い場合には合計で月に約4000~6000円かかる
生理には個人差があり、必要な生理用品の量は人によって異なる。そこでここでは、「生理が7日間あり、2日目と3日目が経血量が多い。多い日はナプキンを昼4回交換する女性」をモデルとして考え、月におよそいくらかかるのかを概算する。基本的には7日間ナプキンを使用し、痛み止めを服用すると仮定する。
すると、1カ月あたりにかかる金額は、多い場合(その月に60錠入りの痛み止め、生理用下着1着を購入した場合)で以下のようになる。
ナプキン850円(昼用350円+夜用500円)+痛み止め1800円+下着1着1500円=4150円
さらに、ピルを服用していれば、次のようになる。
ナプキン850円+痛み止め1800円+ピル2000円+下着1着1500円=6150円
収入の少ない大学生にとって、月に4000円、6000円といった出費はどれだけの影響があるのだろうか。生協が全国の大学生を対象に行った調査(2020年度発表)では、一人暮らしをしている大学生の平均月収入は12万2250円であった。これに対し、平均月支出は12万1180円であり、そのうち日常費(生活必需品を購入するための費用…食費や電話代、書籍・勉学費等は含まれない)としての支出は平均7120円だ。この数字をみると、アルバイトや仕送り、奨学金などで生計を立てる女子大学生にとって、いかに生理用品が生活を圧迫するものであるかが理解できるのではないだろうか。
生理用品が非課税の国も
ここまで、若年女性の「生理の貧困」に関する現実を示したが、内閣府男女共同参画局によれば、日本全国の581団体で「生理の貧困」に対する取り組みが行われているという(2021年7月時点)。しかし、日本の法律では未だ生理用品は軽減税率の対象にはなっていない。一方、アメリカのマサチューセッツ州ボストン市では、77の公立学校で生理用品を無償で提供している。ニューヨーク州では2016年から生理用品は非課税となっているし、イギリスでも2020年3月から生理用品の課税が撤廃されている。
「生理の貧困」を解決するためにも、若い女性にとって生理用品費の負担が少しでも軽くなるような施策が必要ではないだろうか。
(学生インターン・金刺由芽)