英インフレ懸念で緩和に批判 「サッチャー以前」の停滞再来も=増谷栄一
有料記事
英上院経済委員会のフォーサイス委員長(保守党)は7月16日、イングランド銀行(英中央銀行=BOE)の1500億ポンド(約22・5兆円)の追加資産買い入れの正当性を約半年間、審査した報告書を公表した。同委員長が、「BOEはQE(量的金融緩和)中毒」と漏らして以降、政界やロンドン金融街(シティー)でQE継続の是非をめぐって議論百出となっている。
同報告書は、BOEが昨年11月会合でQE規模を国債買い入れ枠だけ1500億ポンド増額し、総額8950億ポンドに拡大したが、新型コロナウイルス感染拡大からの景気回復によりインフレが急加速しているにもかかわらず、巨額の資産買い入れを続けていることに苦言を呈したもの。BOEのキング元総裁も報告書作成に加わっている。
その後、BOEのベイリー総裁は8月5日会合後の会見で、政策金利が現在の0・1%から0・5%に引き上げられた段階で、テーパリング(QEの段階的縮小)を開始するという考えを初めて吐露し、柔軟さを示している。
英紙『フィナンシャル・タイムズ』のスタビントン記者は「QE停止はBOEの想定以上に難しい」と8月13日付コラムで指摘し、「BOE金融政策委員会のブリハ前委員も7月の講演で、『BOEは、1500億ポンドの追加買い入れが経済を刺激するとは想定しておらず、英国債の暴落=長期金利急伸の再発防止が狙いだった』と暴露した。QE停止を簡単に考えるのは無謀だ」と強調した。
同報告書は、「BOEが量的緩和政策に依存しすぎて、資産価格を押し上げることで貧富の差を拡大している」とも指摘。英紙『デーリー・テレグラフ』のコラムニスト、ハリガン氏は、「上院経済…
残り679文字(全文1379文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める