歴史的な需給のミスマッチ 米国で進む「働き方の見直し」=岩田太郎
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米労働省が9月8日に発表した統計で、7月の求人数が1093万人分と、870万人の失業者数を223万人分も上回ったことが明らかになった。なぜこのような需給のミスマッチが米労働市場で起こるのか、労働構造の根本的な変化も含め、論壇では要因が分析されている。
ベン・バーナンキ元米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、9月4日付の『ワシントン・ポスト』紙の解説記事で、「米経済は、人々がどこで働くか、どのように働くかという(構造的な)配置転換による大きな変化を経験しており、それは後に重大な影響をもたらすものだ。労働者たちは、最善の選択肢を見極めようとしている」との見立てを披露した。
同記事は、「事業主たちは今、十分な数の働き手を見つけられない。コロナ禍以前と比較して、働いていない、あるいは求職していない人が490万人増える一方で、引退した人も360万人増加している。この現象の核心は、米国でパンデミック後に進行中の『働き方の見直し』による、大規模な労働力の再配置である。この先、恒久的にリモートワークで働きたい人もいれば、家族と過ごす時間を増やしたい人もいる。別の人々は、より柔軟性を持った、より意義のあるキャリアを求めている」と、具体的に説明した。
一方、オバマ元政権で大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務めたジェイソン・ファーマン米ハーバード大学教授は、9月3日付のピーターソン国際経済研究所のブログで、「米労働市場が引き締まっている傍証は、求人数と離職数が高止まりしているところに求められる。人々は、仕事を辞めても新しい職が見つかることに自信を持っている」と分析。その上で、「現在見られるよう…
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週刊エコノミスト
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