国際・政治東奔政走

人事不評の岸田新政権 「ボロ出る前」に衆院選前倒し=中田卓二

    衆院本会議で首相に指名され、一礼する自民党の岸田文雄総裁(中央、国会内で2021年10月4日)
    衆院本会議で首相に指名され、一礼する自民党の岸田文雄総裁(中央、国会内で2021年10月4日)

    人事不評の岸田新政権 「ボロ出る前」に衆院選前倒し=中田卓二

     慢心とは言わないが隙(すき)はあったのだろう。それは自民党全体に、だ。岸田文雄首相の人事の評判が芳しくない。表紙を変えさえすれば衆院選はどうにかなると踏んだのか。「ご祝儀相場」は案外、長続きしないかもしれない。

     8月26日、総裁選に立候補を表明した岸田氏は日本の民主主義の現状に危機感を示し、「自民党に厳しい目が注がれている。党のガバナンス改革をしっかり進めていく」と訴えた。

     この時点では、再選を目指した菅義偉首相(当時)にまだ分があった。ところが、党改革の切り札として岸田氏が提起した「1期1年、連続3期まで」という党役員の任期制限案は思いのほか有効なパンチになる。動揺した菅氏は二階俊博幹事長(当時)の交代を決断し、そこから坂道を転げ落ちるように菅政権は終幕を迎えた。

     9月29日投開票の総裁選で、岸田氏は予想を覆して第1回投票から首位に立ち、決選投票で河野太郎行政改革担当相(当時)に大差をつけた。普段は慎重なもの言いが身上の岸田氏だが、党両院議員総会のあいさつには、高揚感からか、わずかなほころびがのぞいた。「これから衆院選、参院選に臨む。生まれ変わった自民党を国民に示し、支持を訴えていかなければならない」──。

    安倍・菅路線総括なし

     政治信条やキャラクターが違う4候補による争いになったことで、選択的夫婦別姓や年金制度の抜本改革など論戦の幅は広がった。しかも、ほとんどの派閥が支持を一本化せず、勝敗が読みにくくなったためメディアの注目度は上昇。それにつれて自民党の支持率も上がり、党全体に「だれが総裁になっても衆院選は安泰」という楽観ムードが漂った。

     岸田氏が今回の総裁選をもって「自民党は生まれ変わった」と言い切ったのは、こうした党内の雰囲気と無縁ではない。実際には、9年近くにわたる安倍・菅政権の路線を正面から総括した候補はなく、安倍晋三、麻生太郎両元首相は今回の総裁選で勝敗を左右する役割を演じた。

     安倍氏は高市早苗元総務相を全面的に支援し、国会議員票では河野氏を上回る114票を高市氏に集めて力を見せつけた。麻生氏も河野氏が総裁選に出るのを容認しつつ、麻生派を挙げて支援する体制はとらなかった。どちらも岸田政権誕生を視野に入れていたからだ。

     安倍、麻生両氏は菅政権で実権を握った二階氏をけむたがり、甘利明党税制調査会長(当時)を幹事長カードに春ごろから菅氏側を揺さぶっていた。一方、岸田氏が唱えた任期制限案は幹事長在任が5年を超えた二階氏へのけん制にほかならない。3A(安倍、麻生、甘利の3氏)と岸田氏の利害が一致した。

     甘利氏は総裁選で同じ麻生派の河野氏ではなく岸田氏を支持し、「党改革のファーストペンギン」と持ち上げた。菅氏に対抗して最初に手を挙げたという意味だ。その甘利氏を岸田氏は幹事長に起用し、高市氏を政調会…

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