経済・企業 FOCUS
中国恒大集団 社債の利払いに懸念 政府は危機回避の姿勢=梅澤利文
中国の不動産規制による中国恒大集団(恒大)の経営破綻懸念への不安が根強い中で、世界の金融市場はひとまず落ち着きを見せている。リーマン・ショックのような世界的金融システム不安が引き起こされるとの懸念が低下したからであろう。市場が大きく不安視していない理由と今後の課題について、恒大の財務状況と中国当局の対応、二つの観点から考えたい。
まず、恒大の負債だ。恒大の負債総額は約1兆9665億元(約33兆4300億円)と中国の国内総生産(GDP)の約2%に相当する。内訳は半分程度が投資不動産などの未払い分である買掛金等で、その残りの半分程度が社債を含む借入金だ(約5720億元)、顧客への物件引き渡し義務などの前受け金が約2160億元だ。リーマン・ショックの時に悪役であった金融派生商品等はほぼ見られず、負債規模は懸念でもその内容は一般的だ。
大量の社債償還
有利子負債として社債の利払いを確認する(表)。
9月23日の人民元建て債の利払いは実施が報道されたがドル建て債の利払いは9月末時点で未確認だ。年内これ以外の利払いが残るうえ、来年3月からは元利合計2400億円規模の償還も控え返済は苦しい。ただ、恒大のドル建て社債は中国(含む香港)ドル建て社債の総額の1%強に過ぎない。
次に恒大の銀行借入額は2200億元程度で中国の銀行融資全体の0・1%程度であろう。銀行システム全体を揺るがすイメージは描きにくい。中国当局が金融システムリスク回避の姿勢を見せ始めたことに期待が寄せられている。例えば、恒大が本社を置く広東省深圳市当局は恒大の実態調査とともに、返済への取り組みを求めたようだ。また恒大傘下の地方銀行である盛京銀行(遼寧省瀋陽市)が持つ恒大の発行済み株式19・93%分を約100億元(約1700億円)で地方政府系の国有企業が買い取るとの発表は当局主導の対応へのシフトを物語る。金融システムリスクを回避する姿勢は見受けられる。
ただ別の不安が残る。恒大は急ピッチで負債を拡大させた特異性はあるが中国不動産業界の問題は恒大だけではなかろう。当局は今後も規制強化を続けるかもしれない。その場合、中国も不動産価格の下落が中長期的に中国景気を下押しする可能性も考えられる。現在は当局の恒大問題への対応が関心の的だが、今後も当局の不動産規制強化のさじ加減を注目する必要がありそうだ。
(梅澤利文・ピクテ投信投資顧問ストラテジスト)