半導体の高機能化に向けて、半導体後工程の技術革新が期待されている=津村明宏
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高機能化へ重要性高まる 半導体後工程製造装置=津村明宏/54
半導体の製造では、基材となるシリコンウエハーに電子回路を作り込んでチップを作製するプロセスを前工程、ウエハー上のチップを一つずつ切り出して樹脂などで封止し電極などを形成するプロセスを後工程と呼ぶ。世界的な半導体の供給不足と需要拡大に伴い、後工程にもかつてない活況が訪れている。
後工程は、前工程で製造したチップが正常に動作するかを確認するテスト工程と、チップをウエハーから切り出して個片化して封止する組み立て・パッケージング工程で構成される。製造するチップの種類にもよるが、一般的にウエハーを投入してから回路が形成されるまでに2~3カ月を要する前工程に対し、後工程には4週間程度を要する。
半導体製造装置の業界団体であるSEMIが発表した市場予測によると、テスト装置市場は5G(第5世代移動通信システム)や高性能コンピューティング(HPC)用途の需要に応じて、2021年に対前年比26%成長し76億ドルになり、22年にはさらに同6%拡大する見込みだ。組み立て・パッケージング装置市場は、先端パッケージの用途拡大で21年に同56%増の60億ドルに達し、22年にはさらに同6%増加すると予測している。
米調査会社VLSIリサーチの調べによる20年の半導体製造装置メーカー売上高ランキングでは、トップ15社に後工程の装置メーカーは3社含まれている。テスターで世界最大手のアドバンテストと2位の米テラダイン、組み立て・パッケージング装置大手のASMパシフィックテクノロジー(シンガポール)だ。このほかに、後工程の大手装置メーカーとしては、チップを個片化するダイシング工程で圧倒的な強さを誇るディスコ、チップを基板やリードフレームに配置するボンディング装置大手のキューリック&ソファインダストリーズ(シンガポール)などがある。ボンディング装置市場は参入メーカーが多く、日本勢としては東レエンジニアリング、芝浦メカトロニクス、キヤノンマシナリーらが存在感を発揮している。
OSATが成長をけん引
後工程市場にきわめて大きな影響を与えるのが、半導体の組み立て・テスト工程だけを専門に手がけるOSAT(Outsourced Semi-conductor Assembly & Test)と呼ばれる企業の活躍だ。前工程では、半導体各社からチップの生産だけを専門に請け負う台湾TSMCのようなファウンドリー(受託生産)企業が存在するが、OSATは「後工程におけるファウンドリー」だと理解してよい。ちなみに、前工程に占めるファウンドリーの生産比率は30~40%といわれるのに対し、後工程にOSATが占める比率は60%にも上るといわれている。
OSAT最大手は台湾のASE(日月光半導体)だ。21年4~6月期における半導体組み立て・テスト部門の売上高は、前…
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週刊エコノミスト
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