教養・歴史書評

自助努力と決意の平民宰相。没後100年の原敬に学ぶ=井上寿一

「平民宰相」没後100年 その現実主義に学ぶ=井上寿一

 第100代の内閣総理大臣が誕生した。岸田(文雄)新首相は約10年間にわたって「岸田ノート」をつけているという。記者会見でかざした「岸田ノート」を読んでみたいものである。首相のノートで思い浮かんだのは原敬の日記である。原は約半世紀の長期間、書き続けた。権謀術数が渦巻く政治の世界を生々しく詳述する原の日記は、歴史研究者を魅了し続けた。今でも何冊かの評伝研究を読むことができる。たとえば伊藤之雄(ゆきお)『原敬 外交と政治の理想(上・下)』(講談社選書メチエ、各2640円)は、膨大な原の日記にふさわしく事実を網羅する評伝である。

 さらに没後100年の今年、新しい評伝である清水唯一朗『原敬 「平民宰相」の虚像と実像』(中公新書、990円)が刊行された。以下では同書に依拠しながら、研究者の評価の高さとは対照的に世上の評価が芳しくない原の人物像を考える。

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