電力不足で相次ぐ停電 中国のエネルギー市場が抱える課題とは=岸田英明
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電力不足で相次ぐ停電 エネルギー市場に脆弱性=岸田英明
9月下旬以降、各機関が相次いで2021年の中国の成長予測を引き下げている。ゴールドマン・サックスが7・8%(従来の予測値は8・2%)、野村証券が7・7%(同8・2%)などで、いずれも電力不足問題を理由に挙げている。
10月上旬までに中国にある31の省・自治区・直轄市のうち、20以上で計画停電が実施され、生産活動や住民生活に影響が出ている。各地で電力消費量の多い工業企業向けの送電が絞られたり、華南地域の一部で低層階のエレベーター使用やオフィスでのエアコン使用が禁止されたり、といった具合だ。政府は住宅、農業、公共部門向けの電力供給は優先して守る姿勢だが、東北地域では一部住宅エリアでも停電が発生した。
背景には、(1)世界的な石炭需要増による価格高騰と調達難、(2)中国の強い輸出や猛暑による電力需要増、(3)中央政府の地方政府に対するエネルギー消費抑制指導強化、(4)電力価格自由化改革やガバナンス改善(ピークシェービングの効率的な実施等)の遅れ、(5)水不足による水力発電量の低下──等がある。各要因の強弱は地域によって異なるが、複合的に働いた点は共通している。
中国の電源構成における石炭火力の比率は近年低下が進んでいるが、発電量べースでなお6割を超えている(20年は60・8%)。そうした中で、21年1~8月の電力消費量は前年同期比で13・8%増えたが、習近平政権の石炭生産抑制政策を受け、同期間の石炭生産量は4・4%増にとどまった。
また中国は昨秋以降、第2位の石炭輸入元だった豪州からの輸入を外交関係の悪化により止めてきた。中国の…
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週刊エコノミスト
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