電力制限が繊維産業を直撃 工場停止で値上げ常態化も=岩下祐一
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電力制限が繊維産業を直撃 工場停止で値上げ常態化も=岩下祐一
中国で9月下旬から始まった製造業などへの電力供給制限が、繊維産業を直撃している。制限を受け、染料や染色加工賃などの値上がりが始まった。電力供給がさらにタイトになり、影響が拡大する可能性もある。
新型コロナウイルス禍に苦しむ東南アジア諸国連合(ASEAN)地域や、インドやパキスタンなどの南西アジアからの生産回帰が続き、中国の繊維工場は今年、高稼働率が続いていた。特にホーチミン市を都市封鎖したベトナムと、国軍によるクーデター発生で混乱するミャンマーからの縫製のシフトが目立っていた。中国の衣類の1~9月輸出額は過去最高の1224億ドル(約13兆9600億円)で、前年同期に比べ25・3%も増えている。
ところがその様子は9月下旬に一変した。電力供給がストップし、「仕事はいくらでもあるが、生産できない」(江蘇省の生地メーカー)状況に陥っている。
合繊織物の産地である江蘇省蘇州市呉江区では、中秋節(中秋の名月)の連休(9月19~21日)中に、工場への電力供給が突如制限された。スポーツウエアなどに使われる合繊のプリント生地を生産する蘇州海星紡織は、9月20日から電力供給を突然止められた。「猶予期間はほとんどなく、問答無用といった感じだった」と劉涛董事長は振り返る。
電力供給制限の要因については、主に二つの見方がある。一つは、中国の電力発電の7割を占める火力発電の燃料である石炭が不足しているという見方だ。海外からの生産回帰を受け、製造業を中心に電力使用量が今年急増した。一方で2016年以来、環境保護のため国内の石炭生産量を減らしてき…
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週刊エコノミスト
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