エネルギー価格高騰で高まる「利上げ圧力」に屈するほどFRBは愚かではない=藤代宏一
FRBの金融引き締めの可能性は低い=藤代宏一
液化天然ガス(LNG)価格の急騰、原油価格の約7年ぶりの高値など、エネルギー価格の上昇が顕著だ。コモフレーションともいわれる資源価格上昇は米連邦準備制度理事会(FRB)の引き締め観測を強め、金融市場の混乱を招いている。
インフレを「一時的」とするFRBの見解は今や危うくなっており、一部のタカ派メンバーは高インフレへの警戒を強め、早期の金融引き締めを主張している。
FRBが重視する個人消費支出(PCE)デフレーターの予想は度重なる上方修正を迫られ、2021年の予想中央値は3月の前年同月比2・4%上昇から9月は4・2%上昇へと切り上がっている。この間、22年の予想中央値は前年同月比2・0%上昇から2・2%上昇へと小幅修正にとどまったが、米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者が認識する見通しのリスクはアップサイドに偏っており、22年の数値も上方修正が繰り返される可能性がある。
インフレ見通しの上方修正は金融引き締めにつながることが多い。だが、資源価格上昇やサプライチェーン問題に起因するインフレをFRBが金融引き締めによって対処するだろうか。引き締め効果で需要が落ち込めばインフレは鎮静化するが、代償は大きい。
ECBの利上げの代償
実例が、11年の欧州中央銀行(ECB)による利上げだ。リーマン・ショックの傷が癒えない中、欧州債務問題が深刻化してお…
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週刊エコノミスト
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