週刊エコノミスト Online

新規上場でみずほ主幹事の銘柄がダントツに値上がりするワケ

     日経平均株価が31年ぶりの高値を付けた2021年。株高を受けて企業の新規株式公開(IPO)の件数が増加している。9月までの東京証券取引所での上場件数は80社に達し、20年通年の93社を上回る勢いだ(フィスコ調査、10月8日現在)。上場が増えている背景には、コロナ禍でデジタル推進を中心に事業拡大を進めるために、企業の資金ニーズが高まっていることが挙げられる。>>特集「上場の呪い」はこちらから

     IPO銘柄は規模の大小に関わらず、個人投資家の人気が高く、株価を支える傾向がある。今年も上場初値は株価上昇が大きかった。80銘柄全体の初値の値動きは、公開(売り出し)価格に比べて平均で70%を超える上昇率で、初値が公開価格より下落したのはわずか5銘柄だった。

     買いたい人に対して、株数が少なければその分人気が高まるため、売り出し規模も株価を大きく左右する。80銘柄の売り出し規模の平均は54・11億円で、100億円以上は12銘柄に対し、10億円未満は21銘柄だった。最大の上昇率はEC構築やオンラインゲーム事業などを手掛けるアピリッツで、初日に株価が約4・7倍となった。売り出し規模は約3億円だった。

    企業か投資家か、どちらを重視

     IPOの過程で重要な役割を担っているのが、主幹事を務める証券会社だ。主幹事は、上場に関心がある企業と上場計画について時期やタイミング、規模などについて助言、支援する。上場までに3~4年かかるのが一般的だ。金融市場の動向や投資家の関心を考慮しながら、公開価格を決める。

     主幹事の証券会社と、株価に関係があるかを比較してみた(表)。フィスコの調査では、ほぼすべての主幹事で初値は大幅に上昇した。ただし、上昇幅には開きもある。アピリッツを含む22社を担当したみずほ証券は、平均100・4%(約2倍)の上昇率と群を抜いて高かった。野村証券は20社で同44・9%、SMBC日興証券は13社で同54・1%。中小型株に力を入れるいちよし証券は3社で同81・4%だった。

     公開価格とその後の株価の動きになぜ大きな違いが出るのか。フィスコのチーフアナリストの小林大純氏は、上場する企業と投資家のバランスがポイントと説明する。小林氏は「証券会社は、主幹事業務を獲得するため、上場する企業に配慮してどこまで公開価格を高く設定できるかと、株式上場後に投資家を確保するため、どこまで公開価格を下げるか、のバランスで最終的に公開価格を決める」と話す。

     分かりやすく説明すると、IPOで資金調達する企業にとって、公開価格が高ければ高いほど、多くの資金を上場で手にできる。しかし、企業が望むままに公開価格を決めると、高すぎた場合、今度は投資家が買いにくいという事態になる。だからほどほどの水準で決めるということになるだろう。大規模な上場銘柄は多くの投資家に買ってもらわないと、売れ残りを主幹事が抱えることになる。それは避けたいので、あまり高い株価は設定しにくいということのようだ。

     みずほ証券の主幹事銘柄が、他の主幹事銘柄と比べて値上がり率が高い理由も、こうした背景を念頭に推測することができる。ある証券アナリストは「みずほ証券は、みずほフィナンシャルグループの一員であり、銀行の融資も考えると、上場する企業に対して比較的強い立場にあるので、むしろIPOの需要家である投資家に配慮して値上がりが見込める価格設定になっている可能性がある」と分析している。低金利が長期化しているため、企業は銀行からの借り入れでも多額の資金を調達できる環境で、無理に上場による資金調達に頼らなくても良いということか。

     もちろん上場後もずっと値上がりが続くわけではない。上場後に個人の売買が一巡すると株価の上昇は落ち着く傾向がある。80銘柄についても、現在の株価(10月8日現在)は、初値比で平均20%安(フィスコ調査)となっており、アピリッツは同6割超下落した水準だ。一方、主幹事別でみた公募価格と現在の価格の騰落率は、17・2%の下落率(東海東京証券)から76・4%(みずほ証券)の上昇率とさまざまだった。

     現在の株価と公開価格と比べてどうみるか、さまざまな見方がある。IPO価格のそもそもの設定が企業寄りで、企業の実力に対して高すぎたため、現在は値下がりしているのか。逆に、IPO価格の設定が低すぎたために、いまなお値上がりしているのか。実際の見極めは難しい。

    儲かるIPO引き受け

     証券会社にとってIPO引き受け業務は利益率が高い。高い利益率の仕組みはこうなっている。引き受け会社は上場前に上場予定の株式を公開価格より低い水準で引き受け、公開価格で投資家に売却する形で利益を出す。これが引き受け業務の利益になる。引き受けマージン(利益率)と言われ、主幹事とIPO企業で自由に決めることが出来る。大体のところ、1株当たりの価格で7~8%のマージンになっているようだ。10億円規模のIPO規模とすると、7000万~8000万円の利益になる。携帯電話のソフトバンクの約2兆6000億円のIPOでは、引き受けマージンは2・4%(フィスコ調査)だったが、それでも600億円を超える。手数料ゼロでの株式売買仲介の競争と比べると、虎の子のビジネスと言える。

     証券会社は利益率が高い主幹事の仕事を得るために凌ぎを削っている。マネックス証券の広木隆氏は「IPO引き受けは企業の評価能力、株式の販売の総合力がないと出来ない。主幹事はさらに難しい」と話す。IPOをめぐる証券会社、新規上場企業、投資家の水面下の“攻防”は激しさを増しそうだ。

    (桑子かつ代=編集部)

    インタビュー

    週刊エコノミスト最新号のご案内

    週刊エコノミスト最新号

    2月1日号

    需要大爆発 半導体 メタバース、グリーン、デジタル14 業界予測超える新次元成長 日本の期待は装置・材料 ■村田 晋一郎/斎藤 信世17 需要が爆発 世界的なデジタル、グリーン化 ■南川 明20 不足解消は? 最短22年春も常態化の懸念 ■戸澤 正紀21 インタビュー 貝沼 由久 ミネベアミツミ会長 [目次を見る]

    デジタル紙面ビューアーで読む

    おすすめ情報

    編集部からのおすすめ

    最新の注目記事