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終わりの見えない原油高で高まる「スタグフレーション」の現実味=渡辺浩志

 原油価格の動きは、金融市場や金融政策を揺さぶる。

 新型コロナウイルス禍が襲った昨春は、原油価格が一時マイナス圏に転じ、エネルギー産業の経営悪化や格下げに直結して社債利回りを急騰させた。原油安が進むほどに信用スプレッド(低格付け社債利回り-米10年国債利回り)は拡大し、信用不安が高まった(図1)。さらに原油安は米国で懸念されていたインフレ率の低下に追い打ちをかけ、人々のインフレ期待を押し下げた。

 これに対して米連邦準備制度理事会(FRB)は、昨年4月に社債買い入れ等の「信用緩和」を実施。同8月にはインフレ期待を高めるべく「平均物価上昇率目標」も導入し、金融緩和を強化した。

物価高止まりの懸念も

 このように、昨年は原油安が金融政策を振り回した。だが、足元では原油高が問題になっている。経済活動の再開で原油需要が急回復する一方、供給能力は脱炭素化に向けた産油国の投資抑制によって低下しており、需給の逼迫(ひっぱく)が原油価格を急騰させている。

 米国では企業が原油コスト増を消費者に速やかに転嫁するため、原油高が家計のインフレ(コアPCEデフレーターの上昇)に直結する(図2)。米国では今、人手不足や部品不足などの供給制約で高インフレが発生している。FRBは、この状況は「一時的」であり来年にも沈静化するとみる。だが足元の原油高が続けば、来年の物価はFRBの予想を上回り、2%台後半で高止まりする恐れ…

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週刊エコノミスト

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