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週刊エコノミスト Online 東奔政走

石原、甘利、平井氏の敗因は、公明支持層の離反

落選して支持者に頭を下げる石原伸晃氏
落選して支持者に頭を下げる石原伸晃氏

石原、甘利、平井氏の敗因は公明支持層の相次ぐ離反=中田卓二 

 10月の衆院選で自民党は「絶対安定多数」の261議席を確保した。就任間もない岸田文雄首相にとっては及第点と言える。それでも党内に高揚感が乏しいのは、甘利明前幹事長ら複数の大物が小選挙区で苦杯をなめたからだろう。敗因を分析すると、ある共通点が浮かび上がる。

 投開票前日の10月30日夜、東京都杉並区のJR荻窪駅前で最後の訴えに臨んだ自民前職の石原伸晃元幹事長には悲壮感が漂っていた。報道各社の情勢分析で、苦戦は明らかだったからだ。

 衆院解散直前にれいわ新選組の山本太郎代表が立候補を表明したのをきっかけに、杉並区が属する東京8区の注目度は一気に上がった。その後、山本氏は出馬を撤回したものの、同氏が演出した「打倒石原」のムードは、野党共闘候補の立憲民主党新人、吉田晴美氏を後押しした。

 最終演説で石原氏は、それまでの立憲民主党と共産党の「野合」批判を控え、新型コロナウイルス対策や経済再生など自公政権の実績のアピールに徹した。共闘の矛盾を突く戦術はもはや逆効果だと観念したのかもしれない。

 同じころ、隣のJR阿佐ケ谷駅では、吉田氏が南口に、市民連合や共産党の支持者らが北口に分かれて駅利用客に支持を呼びかけていた。共闘の側もまた一枚岩ではないことを物語る光景だった。

推薦を依頼せず

 ふたを開けると、石原氏は吉田氏に3万票を超す大差で敗れ、比例代表での復活当選もならなかった。陣営幹部は「相手が山本太郎だったら、アンチ山本票がうちに来たはず。吉田氏にはアンチがいない分、戦いにくかった」と肩を落とした。

 石原氏は今回、公明党に推薦を依頼していなかった。活発に運動する共産党に慌てた陣営が公明党にすがったときにはすでに手遅れだった。

 戦術ミスは共同通信社が10月31日に実施した出口調査の結果にも表れている。公明支持層で石原氏に投票したと答えた人は62%にとどまり、吉田氏に27%、日本維新の会新人の笠谷圭司氏に12%が流れた。無党派層の投票先は吉田氏が65%、笠谷氏が20%で石原氏は15%。これでは勝負にならない。

 岸田内閣を支持する層でも石原氏への投票は60%で、吉田氏が25%、笠谷氏が15%を取り込んだ。つまり、石原氏の最後の訴えは上滑りしていたことになる。

 神奈川13区では甘利氏が落選した。昨年9月の地元・座間市長選に予兆はあった。甘利氏が支援した当時の現職が、現市長の佐藤弥斗氏にまさかの敗北を喫したのだ。この一件は関係者の間で今も「座間の悪夢」とささやかれる。保守系の佐藤氏は今回の衆院選で表立った動きをしなかったが、甘利氏との一騎打ちを制した立憲新人の太栄志氏のイメージカラーは市長選時の佐藤氏と同じ赤。何やら示唆的ではある。

 甘利氏は、司法的には決着していた過去の「政治とカネ」の問題が幹事長就任で蒸し返された。元東京地検…

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