国際・政治エコノミストリポート

自動車 クルマの大転換期 ファーウェイが狙うEV覇権 通信と半導体で一歩リード=豊崎禎久

ファーウェイの最新システムを装備した中国電気自動車メーカー、BYDの車(今年2月、中国・上海での通信産業イベントで) Bloomberg
ファーウェイの最新システムを装備した中国電気自動車メーカー、BYDの車(今年2月、中国・上海での通信産業イベントで) Bloomberg

 傘下に多数の系列部品メーカーを抱える「タテ型」の垂直統合型モデルを通じて産業界のサプライチェーンの頂点に立つ自動車産業はいま、「100年に1度」の変革期に直面。世界的な脱炭素化の流れの中で、中核技術である内燃機関を手放すよう迫られている。

 電気自動車(EV)に搭載するバッテリーやモーターなどの汎用(はんよう)部品を中心に組み立てが容易な「ヨコ型」の水平分業モデルへの移行が避けられない。

 各部品メーカーが密接に関与する「すり合わせ」において強みを発揮してきた日本のタテ型産業構造は、そう遠くない将来に解体に向かわざるを得ないだろう。

 日本の電子産業のタテ型構造を解体して世界一に返り咲いたのが米国のヨコ型半導体ビジネスモデルであり、同様のことが自動車産業でも再現されるに違いない。

制裁は有名無実化へ

 入社年次を軸に規定された「タテ」の序列を重んじる組織は、「ヨコ」のつながり作りに弱く、実力主義が妨げられ、同業者間の過当競争を招く。その傾向は大企業ほど強い──。

 そう指摘したのは、今年10月に亡くなった社会人類学者の中根千枝氏だった。中根氏は女性初の東京大学教授で、100万部を超えるベストセラーとなった代表作、『タテ社会の人間関係-単一社会の理論』(講談社現代新書)は、上下関係を異様に重視し、「ウチ」と「ソト」を差別する日本社会を理解するための必読書として知られる。55年前に出版した著作で中根氏が指摘した姿がそっくり当てはまりそうなのが、現在の日本の自動車産業である。

 産業構造の変化に伴い、自動車産業で生み出される付加価値の大部分は、自動運転の制御も含めてクラウド型のソリューションが占めるようになる。

 そして、自動車メーカーを産業界の王座から引きずり下ろしそうなのが、米国の「GAFA(ガーファ)(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)」や、中国の「BATH(バース)(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)」に代表される巨大テクノロジー企業群だ。

 中でも、新しい盟主に躍り出そうなのが、中国の通信機器最大手ファーウェイ(華為技術)だ。自動車がモビリティー(移動手段)の一つとなる次世代自動車の中枢を担うのが、通信技術とビッグデータの収集と解析能力にあるからだ。

 GAFA、BATHの各企業を比較しても、通信技術とビッグデータの収集に不可欠な半導体のいずれにも強みを持つファーウェイが頭一つ抜けている。ビッグデータの収集では、人口では中国が米国を大幅に上回る上に、プライバシー保護に対して米国ほど関心が高くないという点も、ファーウェイなど中国勢に有利に働く。

 なによりも、中国は世界最大の自動車市場で、EVの保有台数でも中国が世界トップだ(図1)。米国政府がいかに対中制裁の旗を振ろうとも、世界の自動車メーカーが中国ビジネスを自粛することなど考えられない。ロイター通信が今年8月に報じたところによると、米国政府は国内企業に対しファーウェイ向けの自動車部品用半導体の輸出を認めたという。イデオロギーや政治よりもビジネス優先の産業界の声に押されて、対中制裁は徐々に有名無実化していくだろう。

 米中ハイテク摩擦の象徴となった同社は、米国による制裁を受けて昨年11月にスマートフォンの低価格ブランド「オナー」の中国政府系の企業連合への売却を決め、一時は世界トップに立ったスマホビジネスでは急速にシェアを落としている(図2)。

 スマホに代わる新たな収益の柱として同社が注力しているのが、自動車向けの電子部品やソフトウエアなどのビジネスだ。

「5G」の特許数でトップ

 同社は2019年に「インテリジェント・オートモーティブ・ソリューション(IAS)事業部」を立ち上げて本格的に自動車分野に参入していたが、研究開発は12年から始めていた。今年3月、中国・深圳での記者・アナリスト会見で…

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