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創薬ベンチャーに脚光!東大発など有望企業に株式市場が注目

ベンチャー企業が世界の創薬をひっぱっている Bloomberg
ベンチャー企業が世界の創薬をひっぱっている Bloomberg

 コロナワクチンで注目が高まった創薬ベンチャー。日本でもがんやコロナの治療薬などの開発が進行中だ。

 日本の新型コロナウイルスワクチンの2回目の接種率が2021年11月17日現在で75・78%となり、G7(先進主要7カ国)諸国の中でトップになった。日本で接種されているワクチンは、米ファイザー社の製品と米モデルナ社の製品だ。いずれもmRNA(メッセンジャーRNA)と呼ばれる人工合成による遺伝物質を用いたもので、今回初めて医薬品として実用化された。

 創薬の分野では、化学合成の低分子化合物(分子量が小さい化合物)や免疫において重要な抗体などを用いた医薬品が長らく利用されてきたが、近年は遺伝子や核酸(DNAの構成成分)などの新しい物質を利用した医薬品が相次いで登場してきている。これを製薬業界では「モダリティ(創薬に使う物質)の多様化」と呼ぶ。

 新規の創薬技術が開発される理由は、病気のメカニズムの解明が進み、原因物質が新たに発見されても、既存の技術だけではそれを治療に活かすことができないからだ。革新的な治療法の開発は、新規の創薬技術の登場によって実現するケースが多い。

 こうした新たな創薬技術による医薬品は、主にベンチャー企業から生み出される。遺伝子を利用した医薬品(遺伝子治療薬)は米アベクシス社(ノバルティス社が買収)など、核酸を利用した医薬品(核酸医薬)は米アルナイラム社などが開発しており、mRNAを利用した医薬品(mRNA医薬)はモデルナ社などのベンチャー企業が創生した。

 新たな創薬技術は有用性が認められると製薬会社のニーズが高まり、提携が活発化する。最近の事例でも、mRNA医薬や遺伝子治療薬などで大型契約が締結されている。今後も、有望な創薬技術をもつベンチャー企業は収益獲得チャンスが増すことになろう。

がんやコロナなど対象

 こうした革新的な創薬技術やそれを利用した新薬開発では、日本の創薬ベンチャーも健闘している。もともと日本では低分子化合物や抗体といった物質を利用する医薬品よりも、遺伝子、核酸、細胞などを用いた創薬に取り組むベンチャー企業のほうが多かったからだ。

 ナノキャリアはがん領域に特化した創薬ベンチャーだ。独自のDDS技術(薬物送達技術)を活用し、mRNA医薬、核酸医薬、抗がん剤などの開発を行っている。mRNA医薬では変形性膝関節症の治療薬の開発を進めており、2024年中の治験開始が計画されている。海外から導入したがん治療用の遺伝子治療薬の第3相試験(臨床試験の最終段階)も実施中で、結果次第では22年の承認申請の可能性がある。

 タカラバイオはTCR-T細胞療法と呼ばれる治療法の技術を持つ。患者の免疫機能を担うT細胞に遺伝子を導入し、特定のがん細胞の目印を認識できるように設計されている。大塚製薬と共同で滑膜肉腫を対象に国内で新薬開発を行っており、承認申請の準備段階にまで進んでいる。

 モダリスは遺伝子の働きのスイッチを制御する独自の創薬技術をもち、遺伝性疾患治療薬の開発を行っている。筋ジストロフィーを対象に開発中の医薬品のライセンスにも力を入れており、複数社と交渉中だ。

 リボミックは核酸医薬の一種のアプタマー(特定の物質と特異的・選択的に結合する核酸分子)を利用した治療薬の開発を行っている。最も進んでいるのが目の病気である加齢黄斑変性症を対象としたもので、米国で治験の第2相試験中だ。この結果が22年3月までに明らかになる予定で、そのデータを用いて22年中の製薬会社との提携を目指している。

 ペプチドリームは特殊な構造をしたペプチドを利用する創薬技術をもち、欧米の大手製薬会社を中心に多くの製薬会社と提携している。製薬会社に技術を提供するのがメインだが、関連会社を通じて新型コロナ治療薬の開発も行っており、22年1月に臨床研究を開始する見通しだ。リボミックとペプチドリームはそれぞれ東京大学発のベンチャー企業だ。

(山崎清一・いちよし経済研究所首席研究員)

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