週刊エコノミスト Online 日本株 2022年の注目テーマ
まだまだ続く半導体企業の業績拡大、メモリーは市況悪化も
半導体不足のマイナス影響が、自動車だけではなくスマートフォン、家電、ゲームなど広範囲に広がるなかで、足元の半導体メーカーの業績は総じて好調だ。2020年春に新型コロナ禍で生産活動が大きく停滞したときには、半導体メーカーも受注キャンセルによる影響を受けた。だが、今回のセットメーカー(半導体製品を搭載する製品のメーカー)の減産局面では、半導体だけは例外的に影響をほとんど受けなかった。理由は、セットメーカーの多くが、当面は半導体の生産能力の不足が続くため「手に入るものは全て確保しておこう」と考えたためだろう。
大量の受注残がある
現在の半導体市場がどれだけ極端な売り手市場であるかを示す一例として、ルネサスエレクトロニクスの業績見通しを見てみよう。同社の21年10~12期の「自動車向け」の出荷見通し(セルイン)は、7~9月期比で一けた台後半の増加だが、実際の顧客の要求を示す「セルスルー」は50%増に近い二けた増だ。
それ以外の産業、インフラ、IoT(モノのインターネット接続)向けも自動車ほどではないが、需要は旺盛。このため、ルネサスの9月末時点の受注残高は約1兆2000億円(6月末比1・5倍)と、21年12月期通期の売上計画(9779億円)を大きく上回っている。
現在のような極端な売り手市場は来年半ばあたりから徐々に正常化に向かう可能性が高いが、これだけの受注残を抱えているため来年も順調に業績を拡大できそうだ。
同様の傾向は、中堅半導体メーカーの業績にも見て取れる。トレックス・セミコンダクターは、小型アナログICを手掛ける事業とファウンドリー(半導体受託製造)中心の事業が共に好調で、22年3月期営業利益は前年比2・2倍と過去最高業績を見込む。
ミネベアミツミのアナログ半導体は22年3月期に売上高730億円(前年比24・3%増)を見込み、1000億円の早期達成を視野に入れる。リチウムイオン電池用保護ICなどの好調による。
製品分野別では、幅広い用途に使われるアナログ、自動車や家電などを制御するマイコン、搭載製品の頭脳になるロジック市場は、景気の大幅な悪化がなければ息の長い成長が期待できそうだ。
一方、NANDフラッシュメモリーやDRAMなどのメモリーは、汎用品(コモディティー)であることや、巨額な設備投資を早期に回収しようとして稼働率をこまめに調整しないため、需給バランスのわずかな悪化でも価格が大きく下がりやすい。
日本で唯一のNANDフラッシュメーカーであるキオクシアホールディングスの業績は、旺盛なデータセンタ投資を背景にした需要増と今年4~6月期から価格が上昇に転じたため21年7~9月期の売上高は前年比22%増の4005億円、営業利益は約4倍増の780億円と絶好調。キオクシア株を40%保有する東芝の持分法損益も前年比で大きく改善した。ただし、来年後半あたりからは増産効果による市況悪化リスクには注意が必要だろう。
(和泉美治・SBI証券シニアアナリスト)