教養・歴史書評

中世史研究者の想像を絶する『荘園』(中公新書)の売れ行き=今谷明

「古気候学」の知見動員し荘園研究の新成果を紹介=今谷明

 今回は伊藤俊一著『荘園 墾田永年私財法から応仁の乱まで』(中公新書、990円)を取り上げる。古代の律令国家は大陸の影響を受け、土地国有性(公地公民)を採用し、土地の把握のために戸籍を、租税徴収のために計帳(けいちょう)を作成した。ただし、この制度には例外があった。皇族や有力者には「封戸(ふこ)」が与えられ、723年には「三世一身法(さんぜいっしんのほう)」が、743年には「墾田永年私財法」が公布され、開発農民には広範な土地私有が認められることになった。これが荘園誕生のきっかけとなる。

 以上は評者の学生時代からすでに教科書で明記されていたが、著者は最新の古気候学、ことに樹木の年輪を構成するセルロースに含まれる酸素の同位体比の変動測定等を動員し、9~10世紀の洪水と干ばつ、乾燥化の実態などを明らかにして、農村の荒廃と土地の新たな開発の関係を論じている。こうした考古学の新しい成果で、集落の荒廃などが多く判明しているという。本書に降水量と気温のグラフが多く示されているのも、従来の歴史…

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