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トップ辞任のみずほFGはデジタル戦略にも出遅れ必至=花田真理

経営陣刷新で汚名返上できるか(みずほフィナンシャルグループの坂井辰史社長=左=とみずほ銀行の藤原弘治頭取。8月のシステム障害時の会見で)
経営陣刷新で汚名返上できるか(みずほフィナンシャルグループの坂井辰史社長=左=とみずほ銀行の藤原弘治頭取。8月のシステム障害時の会見で)

みずほFGに業務改善命令へ 坂井社長と藤原頭取が辞任へ デジタル戦略の出遅れは必至=花田真理

 みずほ銀行で頻発しているシステム障害を巡り、金融庁が同行に検査結果を通知した。11月末までに追加処分となる業務改善命令が出される。さらに、外国為替取引の決済システム障害で遅延が発生した送金取引で、マネーロンダリング対策の不備が認められる外為法違反が数十件に上っていることから、財務省も是正措置を検討している。これを受け、みずほフィナンシャルグループ(FG)の坂井辰史社長と石井哲最高情報責任者(CIO)、みずほ銀行の藤原弘治頭取の3人が引責辞任する方向で調整している。

 みずほ銀行で今年に入って起きているシステム障害は、明らかになっているだけで8回に上る。まず2月下旬から3月にかけて4度の障害が立て続けに発生し、坂井社長は内定していた全国銀行協会の会長就任を辞退した。6月に再発防止策を発表したものの、8月20日には5度目のシステム障害によって全国の店舗で窓口取引が停止した。

 事態を重く見た金融庁は9月22日、検査の終了を待たずに業務改善命令を出す異例の行政処分を発表。システム更新やシステム運営に関する体制整備にまで金融庁が関与するなど、処分内容も異例といえる。そして、その矢先の9月30日には、外為法違反につながる8度目のシステム障害を起こした。金融庁が経営責任の明確化を求めていることから、みずほ側は信頼回復に向けて経営陣を刷新するが、3人同時の引責辞任は異例の決断だ。

全銀協会長も断念

 今後、各行が新たなビジネスモデルの構築に向けてデジタル戦略を強化するなか、みずほFGは足踏みを余儀なくされそうだ。金融庁の関与の下でシステムの安全稼働を最優先しなければならないため、システムに負荷がかかるデジタルサービスの開発などが後回しになっている。みずほ銀行では次世代型金融の柱となるはずだったLINEとの新銀行設立が来年度に延期され、システム障害の余波で暗礁に乗り上げている。

 みずほFGは利益水準で他のメガバンクに水をあけられている。最大の要因は、資本が脆弱(ぜいじゃく)だったためにリーマン・ショック(08年)直後の事業買収で出遅れたことだ。米モルガン・スタンレーを持ち分法適用会社にした三菱UFJFGは、22年4〜9月期連結純利益のうち、同社からの利益貢献が全体の約3割を占める2270億円に上る。デジタル戦略で再びみずほFGが後れを取れば、他のメガバンクとの差は一段と開きかねない。

 金融庁が11月中に最終的な処分を出す背景には、全銀協の次期会長を決められない状態を解消するための配慮も透けて見える。メガバンク3行が輪番制で担う全銀協の会長は毎年4月に交代し、前年の10〜11月に次期会長を内定する。5度目のシステム障害が起きるまでは、みずほFGの坂井社長が22年度の会長に内定する見通しだった。今回、坂井社長の辞任が決定的となり、次期全銀協会長には三菱UFJ銀行の半沢淳一頭取が内定するとみられる。

(花田真理・金融ジャーナリスト)

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