マーケット・金融注目の特集

コロナ禍の地域を下支え 宇宙も視野に成長の種まき=中園敦二/市川明代

 <2021年3月期ランキング>

 新型コロナウイルス禍が2年近くに及び、経済活動はいまだ本格的な回復には程遠い。地域経済を支える信用金庫にとって、その真価や存在意義が大きく問われた局面でもある。それだけでなく、信金には高齢化への対応や地域の定住人口の増加、そして次なる地場産業の成長の芽の育成など、直面する課題は山積する。さまざまな信金の取り組みを取材した。特集「信用金庫の真価」はこちらから>>

碧海(愛知) 「金シャチ」商談会

 コロナ禍で中小企業の多くは対面での商談ができず、新たな販路開拓に支障が出ている。そうした中、中小企業の顧客をオンラインで引き合わせる商談会を開催しているのが碧海(へきかい)信用金庫(愛知県安城市)だ。名付けて「へきしん金シャチねっとワーク」。西三河などを地盤とする地域の取引先事業者と、名古屋市の企業をつなぐ狙いで、名古屋のシンボル「金シャチ」を冠した。

 地元のテレビ局グループが企画するテレビショッピング番組向けに商材を売り込む今年1月の商談会には、予想の倍の46社が希望した。また、全国規模のガソリンスタンド運営会社が設ける通販サイト向けに、今年9月に開いた商談会には想定を5割上回る61社が参加。日程を1日増やして3日間開催し、通販サイト側が参加企業全社と商談して、約40社が成約にこぎつけた。

 来年2~3月にも第3弾を予定しており、碧海信金名古屋営業部の永田祥都(よしくに)営業グループ長は「中小企業の販路拡大ニーズが大きく、企業と企業をつなぐのも信金の使命。『金シャチねっとワーク』を続けていきたい」と話す。

宮崎第一(宮崎) 新食品を開発支援

 コロナ禍の逆風下、再始動したのが宮崎第一信金(宮崎市)だ。宮崎県内の旧宮崎都城信金(同)と旧南郷信金(日南市)が昨年1月に合併。「第一」という名称は顧客から「地域で一番頼りにされる金融機関になる」という意気込みを込めた。昨年9月~今年3月には、新たな取り組みとして「みやざきFOOD DESIGN CAMP(フードデザインキャンプ)」と銘打ち、地場企業の新商品開発を支援している。

 みやざきフードデザインキャンプでは、新商品開発や既存商品のリニューアルを検討している食品や飲食事業者と、県内のデザイナーがチームを組んでワークショップを4回開催。参加事業者には多くの希望者の中から、これまで取引がなかった2社を含めて5社が選ばれ、パッケージデザイン、ネーミング、SNS(交流サイト)での発信方法を検討した。

 開発された新商品は、玄米塩こうじ、ショウガシロップ、宮崎牛のレトルトカレー、干しエビと唐辛子のエスニック調味料など。今年3月には東京・新宿にある宮崎県のアンテナショップ「新宿みやざき館KONNE」で実際に販売した。宮崎第一信金総合企画部の大田由美係長は「コロナ禍で来客は多くはなかったが、試食で寄せられた声を商品改善につなげ、今後宮崎県内でもテスト販売したい」と話す。

沼津(静岡) 地域経済の“羅針盤〞

 沼津信金(静岡県沼津市)にとって昨年は創業70周年。コロナ禍の真っただ中の7月に、JR沼津駅から徒歩5分程度の商店街にある旧支店の3階建ての建物(延べ床面積730平方メートル)をリニューアルし、まちづくりのための交流施設「ぬましんCOMPASS(コンパス=「羅針盤」の意)」を開設した。職員2人が常駐し、信金のネットワークや経営支援ノウハウを生かして、「伴走」するスタイルで創業支援にも当たる。

 内装には地元の間伐材を使い、明るく開放的な空間を実現。主に移住や創業を目指す起業家やクリエーター向けに1階は図…

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