教養・歴史書評

二千年前の中国人の24時間にタイムスリップできる1冊=加藤徹

秦漢時代の民の生々しい一日 人間臭い「卑俗な欲得」活写=加藤徹

 柿沼陽平『古代中国の24時間』(中公新書、1056円)は副題「秦漢時代の衣食住から性愛まで」とあるとおり、2000年前の中国の「生」と社会を活写する。著者は1980年生まれの早稲田大学教授である。

 秦漢時代は日本でも人気だ。始皇帝や項羽、劉邦、曹操、劉備など英雄の戦いは小説や漫画、ゲームでもおなじみだ。一方、当時も人口の大多数は無名の普通の人々だった。古代の男や女、庶民や上流階級は、人生をどう生きたか。著者は、膨大な文献史料と出土資料を活用し、生き生きと描く。文体は中学生でもすらすら読めるほどやさしく、筆致もユーモアに富むが、内容は深い。

 本書は、日の出前から日没後までの「一日24時間史」である。まるで古代社会にタイムスリップした人向けのガイドブックのようだ。

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