米FRBの政策判断を誤らせる「物価目標2%」の呪縛=愛宕伸康
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米国では、消費マインドを表す消費者信頼感指数が高インフレで大きく悪化しているにもかかわらず、消費が堅調だ。
小売売上高は3カ月続けて市場見通しを大きく上回って増加し、速報性の高い統計を基にしたアトランタ連銀の2021年10~12月期のGDPナウキャスト(実質GDP予測値)は一時、前期比年率9・7%増に達した(図1)。
しかし単純には喜べない。マインドが悪化しているのに消費が伸びるという現象は、インフレに伴う「買い急ぎ」の発生を示唆している。実際、現地エコノミストの間では、買い急ぎとその反動を織り込み、10~12月期の見通しを上方修正する一方、翌1~3月期を下方修正する動きが見られる。
中央銀行が目指す「物価安定」とは何か。13年の日本銀行の資料によると、「家計や企業等のさまざまな経済主体が、財・サービス全般の物価水準の変動にわずらわされることなく、消費や投資などの経済活動にかかる意思決定を行うことができる状況」である。
これに照らせば、米連邦準備制度理事会(FRB)はすでに金融政策運営に失敗している。パウエル議長は11月30日の議会証言での「インフレは一時的」との見方を改め、11月から開始したテーパリング(資産購入額の削減)のペースを加速させることを示唆した。
だが、金融政策には通常、効果が表れるまで半年以上のタイムラグがある。テーパリングを来年3月ごろまでに終わらせ、利上げに踏…
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週刊エコノミスト
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