景気後退の「前兆」が見えてもなお株高が続くこれだけの理由=渡辺浩志
金融相場が終わっても株高は続く
米国では高インフレが長期化するとの警戒感から、連邦準備制度理事会(FRB)が資産買い入れの縮小ペースを加速させ、来年中に利上げを開始するとの観測が高まっている。
新型コロナウイルスの新たな変異株(オミクロン株)の出現も、供給制約によるインフレを助長し、利上げの前倒しを促す公算が大きい。
債券市場では、金融政策の影響を受けやすい短期金利が上昇する一方、将来の景気減速を見込んで長期金利の上昇が抑制され、長短金利差(10年国債利回り−2年国債利回り)は縮小している。
米国の長短金利差は図1のように、景気の強弱を表す需給ギャップ(一国経済の需要と供給の乖離(かいり)率)と連動してきた。これは金融政策が経済・物価動向に沿って、適時適切に運営されてきたことの証しでもある。
市場参加者の経済予測に基づけば、需給ギャップは2024年内に約1%となるが、それに沿った利上げが進めば、長短金利差も同時期にゼロになりそうだ。
かつては長短金利差がゼロを割ると、約1年後に景気後退や株価暴落が起こるといわれた。その法則性は図1にもみられるが、今回は例外となりそうだ。
過去との違いは超低金利
過去との違いは、金利水準の圧倒的な低さにある。FRBは利上げの終着点である中立金利(景気に対して引き締め的でも緩和的でもない政策金利)を2・5%とみている。通常、国債利回りは中立金利と政策金利…
残り465文字(全文1065文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める