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渋谷のマンションをデジタル証券で小口化  ケネディクスが狙うJリートとは違う市場

 不動産投資・運用の大手、ケネディクスがデジタル不動産ファンドを開始した。Jリートや一般の不動産ファンドとは違う商品として、新たな事業の柱に位置付ける。個人投資家らをターゲットに新市場を開拓する狙いとは。中尾彰宏・同社執行役員・デジタルセキュリタイゼーション推進部長に聞いた。(聞き手=桑子かつ代/編集部)

―― 国内初の公募型の不動産セキュリティー・トークン(ST)を発行し、ファンドの運用を開始した。どのような商品か。

中尾 1件の現物不動産を証券化して小口投資を可能とした。2021年7月に約15億円分が販売され、数日間で完売した。投資家は不動産を裏付けとするSTを購入する仕組みで、主に個人向けの非上場商品だ。

 トークンはもともと「証票」、セキュリティーは「証券」を意味する。STはブロックチェーン等の技術を活用して発行されるデジタルな有価証券だ。日本では2020年5月施行の改正金融商品取引法で「電子記録移転有価証券表示権利等」として明確化され、不動産や金融業界で取り組みが広がりつつある。当社以外でも、複数の企業がデジタル証券を発行している。

―― 裏付け不動産はどのようなものか。

中尾 東京都渋谷区神南にある渋谷駅から徒歩約8分の築浅の地上10階建てマンションだ。鑑定価格27億円で、年間賃貸収入を原資として分配金を年2回支払う。予想利回りは3・5%、発行価格は一口100万円となっている。

デジタル証券の裏付けとなった東京渋谷区のマンション
デジタル証券の裏付けとなった東京渋谷区のマンション

Jリートより「分かりやすい」

―― 不動産投資で定着しているJリート(不動産投資信託)や私募ファンドとSTとの違いは何か。

中尾 Jリートは1物件ではなく、複数の不動産を集めたポートフォリオだ。株式と債券の中間の商品として、価格の変動が穏やかなミドルリスク・ミドルリターンとされてきたが、実際には株式市場に連動して不安定な値動きをするケースもみられる。STは非上場なので株式市場からのノイズが入りにくい。投資対象が1物件だけなので自分が不動産として理解して評価が可能な物件だ。Jリートや株式のように、取り扱っている証券会社に口座を開けば購入と売却が出来る。当社はJリート、機関投資家向けの私募ファンドに続き、STを新たな事業の柱に位置付けている。

―― 今後の計画は。

中尾 今年は複数案件、年間で数百億円規模の不動産を裏付けとしたSTの発行を準備している。株式や債券以外のオルタナティブ(代替)投資が注目されているが、一般の個人投資家には敷居が高い。仕組み債の利回り説明は分からなくても、自分の身近なライフスタイルの中にある不動産の資産性については納得感が得られやすい。自分の生まれ育った街の慣れ親しんだ物件に投資したいというニーズを商品化出来れば、地方再生にもつながると思う。

(略歴)なかお あきひろ 1997年日興証券(現SMBC日興証券)入社、2007年ケネディクス入社、15年執行役員、20年から現職。

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