EVシフトが加速し、自動車向け半導体需要が拡大している=津村明宏
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トヨタ、ソニーのEVシフト パワー半導体で投資活発化=津村明宏/58
年末年始にかけて、日本企業の電気自動車(EV)に関する大きなニュースが相次いで発表された。一つはトヨタ自動車が2030年までにバッテリー式EVを30車種発売し、年間販売台数の目標を従来の200万台から350万台へ拡大すると発表したこと。もう一つはソニーグループが22年春に新会社「ソニーモビリティ」を設立し、EVの市場投入を本格的に検討していくと発表したことだ。いずれのニュースもEV市場の拡大を後押しするもので、自動運転の実現に向けた動きと相まって、自動車向けの電子デバイス需要をさらに押し上げることにつながるだろう。
トヨタがEV販売台数の目標を上方修正したことを受けて、デバイス業界内では早くも「パワー半導体の供給が追い付かなくなるのではないか」という声が聞こえ始めている。パワー半導体とは、モーターを効率よく駆動させたり、航続距離を延ばしたりするのに不可欠な電力制御用半導体を指す。
ロームが新工場稼働
現在は口径200ミリメートルのシリコンウエハーを材料にして製造されるシリコンパワー半導体が主流だが、ウエハーの口径を300ミリに大型化して、生産効率を上げると同時に生産量を増やす取り組みが進むほか、より電力効率の高いSiC(炭化ケイ素、シリコンカーバイド)やGaN(窒化ガリウム)を自動車に用いる動きも活発化しており、世界中の半導体メーカーが近年激しく競争している。
日本では、東芝が加賀工場(石川県)に300ミリの量産ライン設置を決定し、三菱電機もシャープから一部を買収した福山工場(広島県)で24年から300ミリでの量産を開始することを決めた。富士電機は当面200ミリでの量産を中心に展開する方針だが、5年間で1200億円を予定していたパワー半導体への投資額を1900億円に増やすことを決めた。しかし、トヨタの新方針で「現状のままでは供給要請に追い付かなくなるケースもありうる」との見方が出始めており、需要に対応するため「投資負担が大きい300ミリ工場を各社の乗り合い方式で整備し生産する」ことが本格的に検討され始めたようだ。
SiCパワー半導体についても需要の見方は同様だ。これまで、自動車用は25年ごろから需要が立ち上がると目されてきたが、直近では「1年~1年半ほど前倒しになる」と見る向きが強く、ウエハーを現在…
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週刊エコノミスト
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