EV用リチウムイオン電池の需要が急拡大し大争奪戦へ=津村明宏
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需要急拡大で大争奪戦 EV用リチウムイオン電池=津村明宏/59
自動車の急速なEV(電気自動車)シフトに伴い、これに搭載されるリチウムイオン電池(LiB)の需要も急拡大している。カナダの調査会社アダマス・インテリジェンスが2月に発表した最新の統計によると、2021年のEV用バッテリー市場規模は286・2ギガワット時となり、20年の134・4ギガワット時から倍増したと発表した。
EVの世界販売台数が前年比113%増と大幅に伸びた恩恵を受け、バッテリーの需要も急増。21年1~9月の累計では184・1ギガワット時だったが、10~12月期に初めて100ギガワット時を超える出荷を達成し、年後半に向かうにつれて出荷が伸びたことが市場規模の大幅な拡大につながった。
この統計によると、EV用バッテリーの世界3大メーカーといわれる中国のCATL、韓国のLGエナジーソリューション(LGES)、日本のパナソニックは世界市場の67%を占め、前年の71%から若干シェアを落としたものの、引き続き高い存在感を示した。
電池をめぐる競争が激化
CATLは中国、欧州、北米の自動車メーカーに87・8ギガワット時を販売。LGESは主に米テスラの中国向けと欧州、北米向けの出荷増で前年比72%増の63・5ギガワット時を販売し、CATLには離されたものの2位を堅持した。パナソニックは、テスラ向けの急増に加え、トヨタ自動車、ホンダ、マツダなど日系自動車メーカーへの販売も緩やかに拡大し、41・4ギガワット時で3位を守った。
車載用LiB市場には、前記3社に加え、中国BYD、韓国サムスンSDI、エンビジョンAESCジャパン、韓国SKオン、トヨタとパナソニックの合弁であるプライムプラネットエナジー&ソリューションズ(PPES)とプライムアースEVエナジー(PEVE)らが参入し、激しく競っている。また近年は、自動車メーカー自身がLiBの研究開発や量産投資に乗り出すケースも目立ってきており、電池をめぐる激しい争奪戦の様相を呈している。
なかでも、傘下にPPESとPEVEを擁するトヨタが30年までにバッテリー式EVを30車種発売し、年間販売台数の目標を従来の200万台から350万台へ拡大するとともに、EV用蓄電池の開発・生産に2兆円を投資し、同年までに年産280ギガワット時の供給体制を構築すると発表。これは、今後のLiB需要見通しに大きなインパクトを与えた。これに続いて、仏ルノー、日産自動車、三菱自動車のアライアンスは、今後5年間で電動化に230億ユーロ(約3兆円)以上を投資し、30年までに35車種の新型EVを投入する…
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週刊エコノミスト
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